2022年12月11日(日)
きょうの潮流
冬枯れの町に、目が覚めるような赤やピンク、白の花をびっしりと咲かせるサザンカ。艶やかな緑の葉と相まって、寒さに縮こまった心もぱっと明るくなります▼千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で140品種を見せる「冬の華・サザンカ」展が開かれていると知り、わくわくして出かけました。シイやカシ、モミジの大木に囲まれた佐倉城址(じょうし)公園を通って会場の植物園へ▼途中、正岡子規の句碑を見つけ、しばし寄り道。〈常盤木(ときわぎ)や冬されまさる城の跡〉。日清戦争が勃発した1894年の暮れ、佐倉を訪れた子規が、城跡に陸軍歩兵連隊の兵営が置かれているさまを見て、その殺伐とした世相を詠んだといわれます▼サザンカもまた戦災と無縁ではありません。沖縄や九州、四国など暖地に自生していた白いサザンカが、各地に広まり、童謡「たきび」にも歌われたように北風の吹く寒い道で生け垣になるまでには、幾度かの戦争による伐採や焼失を乗り越え受け継がれてきた、江戸時代からの歴史があります▼現在、花弁の色や大きさ、樹形もさまざまに300もの品種があるとか。花の名前も「朝日鶴」「大空」「日の出の海」「雪月花」「蝶(ちょう)の舞」「紅雀(べにすずめ)」「笑顔」と、豊かな自然と平和を寿(ことほ)ぐかのようです▼子規にサザンカの句がないか調べると、2句ありました。〈山茶花(さざんか)を雀のこぼす日和かな〉〈山茶花のここを書斎と定めたり〉。雀がサザンカと戯れ、はらはらと花びらが散る小春日、穏やかに読み書きする子規の姿が浮かんできます。








