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2022年12月10日(土)

主張

インボイス制度

「激変緩和」でなく導入中止を

 消費税のインボイス(適格請求書)制度導入に幅広い業界から反対の声が広がるなか、岸田文雄政権は納税額の時限的「軽減」など「激変緩和措置」の方針を示しています。2023年度与党税制改正大綱に盛り込むといいます。零細な事業者やフリーランスで働く人たちに経済的、事務的に大きな負担をかける仕組み自体は同じです。23年10月に導入を予定しているインボイス制度そのものを中止するしかありません。

新たな負担に変わりなし

 消費税は、事業者が仕入れの時と、物・サービスを販売した時の差額を税務署に納めます。今は帳簿で行っている、この控除の計算をインボイスで行うことが義務づけられます。インボイスは課税事業者しか発行できません。

 最大の問題は、消費税の納入を現在、免除されている、年間売上高1000万円以下の事業者に、課税事業者になることを迫ることです。課税事業者の仕入れ先に免税事業者がいるとインボイスをもらえません。インボイスがないと仕入れにかかった消費税を控除せずに納税しなければなりません。それを避けるために免税事業者が取引から排除され、倒産、廃業に追い込まれる恐れがあります。

 日本商工会議所も「令和5年度税制改正に関する意見」で「仮に同制度が導入された場合、免税事業者が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力等を受けたりする懸念がある」としています。

 排除を避けるためには、課税事業者になって消費税を納税せざるをえません。

 もともと零細事業者は、大手業者との競争があるので、仕入れにかかった消費税を販売価格に転嫁することが困難です。納税義務を負うことになれば身銭を切って消費税を払うことになります。少額の取引を1年間集計して納税する事務も大変です。免税制度はこうした負担を踏まえて実施されてきました。

 個人事業主として働いている人の多いアニメ、漫画、演劇、声優・俳優の団体や出版、エンターテインメント業界などから、死活問題だとしてインボイス反対の声明が次々に発表されています。

 政府・与党が検討している「激変緩和措置」は、免税事業者が課税事業者になることを選択した場合、3年間は納税額を、売り上げにかかる消費税の2割を上限とするというものです。売上高が1億円以下の事業者について、制度施行から6年間、1万円未満の仕入れにはインボイスを保存しなくても帳簿の記録で控除を可能とすることも検討中とされます。

 いずれの措置も、免税事業者に新たな納税負担をかけ、事業の継続を困難にする問題を解消するわけではありません。制度をさらに複雑にする点でも「激変緩和」になりません。

消費税減税の運動と共に

 インボイスの発行を迫られる事業者は法人、個人を合わせて1000万に及ぶ可能性があります。年収が100万~200万円しかない事業者も少なくありません。

 コロナ危機や物価高騰で事業継続の瀬戸際にある事業者をさらに苦しめるインボイス制度の導入を許してはなりません。消費税の減税を求める運動とともに、インボイス中止を求める世論をさらに高める必要があります。


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