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2022年12月3日(土)

主張

自民・公明の合意

米の戦争に敵基地攻撃で参戦

 岸田文雄政権が年末に狙う国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に向け、自民、公明両党が、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有で正式合意しました。歴代政府が掲げてきた「専守防衛」さえ有名無実にし、戦後安保政策の大転換を図るものです。

「抑止力向上」は幻想

 政府は「専守防衛」について「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様も、保持する防衛力も、自衛のための必要最小限に限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」だと説明してきました。岸田政権も、「専守防衛」の立場に変わりないと強調しています。

 しかし、敵基地攻撃能力の保有は、過去に政府が行ってきた「専守防衛」の具体的な説明とは相いれません。

 1970年に中曽根康弘防衛庁長官は「日本の防衛の限界については専守防衛を主とする」として「目的において防衛に限る、地域において本土ならびに本土周辺に限る、手段において核兵器や外国に脅威を与える攻撃的兵器は使わないという三つの限定的要素が確立されている」と答弁しています(同年5月8日、参院本会議)。

 政府は、敵基地攻撃が「法理的には可能」という見解を示した50年代にも「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」と答弁しています(59年3月19日、衆院内閣委員会、伊能繁次郎防衛庁長官)。

 敵基地攻撃能力の保有がこうした政府の答弁を覆すものであることは明らかです。

 自公合意が集団的自衛権行使の発動要件である「存立危機事態」でも敵基地攻撃ができることを認めたのは重大です。

 「存立危機事態」は安保法制で規定され、日本の同盟国が攻撃を受けることによって日本の存立が脅かされる事態とされます。同盟国の米国が第三国と戦争を始め、「存立危機事態」と認定すれば、日本は攻撃されていないのに、自衛隊が米軍を支援するため、相手国を敵基地攻撃することができます。

 しかも、敵基地攻撃は相手国が攻撃に着手した時点で可能とされます。そうなれば日本が先に相手国本土を攻撃することになります。対象も限定されていません。日本への報復攻撃は避けられません。

 岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有が「抑止力の向上」になると繰り返しています。

 「抑止」とは相手を脅して攻撃を思いとどまらせようとするものです。政府が保有できないとしてきた「外国に脅威を与える攻撃的兵器」で相手を威嚇することに他なりません。

9条生かした外交こそ

 「抑止」の対象が中国や北朝鮮であることは明白ですが、これらの国は核を含む膨大な数のミサイルを持っているとされます。そうした国を「抑止」するためとして敵基地攻撃能力を持とうすれば際限はなくなります。最終的には、日本の核保有という議論にまで行き着きます。

 敵基地攻撃能力の保有を許さず、憲法9条を生かした外交で東アジアに平和をつくる政治への転換が何よりも求められています。


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