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2022年12月2日(金)

論戦ハイライト

内部留保で賃上げを 大軍拡でなく外交努力

参院予算委 田村智子議員の質問

 日本共産党の田村智子議員は1日の参院予算委員会で、物価高騰に負けない賃上げ実現のための方策を示すとともに、大軍拡ではなく、外交努力をつくして戦争の心配のないアジアをつくるよう提案しました。しかし、岸田文雄首相はまともに答えず、賃金が上がらない構造的な問題に手を付ける姿勢も、軍事費2倍の大軍拡を見直す姿勢も示しませんでした。

中小企業支援

田村 労働者の7割中小企業 全体に届く支援は可能

首相 「生産性向上への支援」に終始

写真

(写真)岸田文雄首相らに質問する田村智子議員(右端)=1日、参院予算委

 田村氏は、「異次元の金融緩和では、賃金は上がらなかった。異常円安を引き起こし、日本経済の出口が見えず、行き詰まりに陥っている。これを打開するには、首相の言う『物価高騰に負けない賃上げ』だ。どうやって実現するのか」と岸田首相に迫りました。

 田村 事業者数で99・7%、労働者数で7割を占める中小企業、小規模事業者への賃上げが鍵だと思う。

 首相 補正予算案では賃上げにつながる生産性向上などへの支援の大幅拡充を盛り込んでいる。

 中小企業を対象に生産性向上の取り組みを支援する「業務改善助成金」は昨年度、コロナ対応で対象を広げても4000件弱しか助成金が交付されておらず、事業者全体の0・1%にすぎません。田村氏は「そもそも中小企業全体を対象にしていない」と指摘し、次のように迫りました。

 田村 中小企業全体に届く賃上げ支援策が求められている。

 西村康稔経済産業相 補正予算案では「事業再構築補助金」やものづくり補助金などを活用して、生産性向上に取り組む。

 田村氏は、西村氏が挙げた「事業再構築補助金」が今年度分では中小企業の約0・5%しか交付されておらず、公募で申請件数の約半数がはじかれていることを指摘。「全体に直接届く支援策は可能」とし、最低賃金の改定に当たって全国の地方審議会のうち9府県が中小企業への社会保険料・税負担の軽減策を要望しており、これらの声に応えて地方審議会と協議・検討を行うよう求めました。

 さらに、田村氏は、最低賃金の引き上げと中小企業への支援策をセットで行ったフランスなどの例を挙げ、「中小企業全体への支援策に踏み切った国は、労働者全体の賃金上昇が持続している。地方審議会の要望に応えて、日本でも検討すべきだ」と要求しましたが、岸田首相は「慎重な検討が必要だ」と述べるにとどまりました。

 田村氏は、大企業の内部留保を活用した中小企業支援など、日本共産党の賃上げ政策を紹介。日本の労働者全体の賃金が下がる一方で、内部留保が大企業の中で積み上がっていくという「ゆがんだ構造」にメスを入れるよう求めました。

雇用

田村 「賃金が上がらぬ国」は非正規増大の政治責任

首相 「デフレ悪循環」理由に無反省

グラフ

 「岸田首相は『構造的な賃上げ』というが、日本が賃金が上がらない国になった構造的な問題をどう分析しているのか」―。田村氏は、厚生労働省が公表した最新の「労働経済白書」が「パート、非正規雇用が労働者数でも割合でも30年間で増大した」ことを示していると指摘し、「これが日本の賃金が上がらない最大の要因ではないのか」と迫りました。

 なぜ非正規雇用がこれほど増えたのかについて田村氏は、政府が「雇用の流動化が経済を成長させる」と旗を振り、規制緩和として派遣労働の対象業務を拡大してきた責任をパネル(上)を示し追及。その下で、企業が派遣労働者を社会保険料の負担もボーナスや退職金の支払いも必要ないとして活用してきたと批判し、次のように迫りました。

 田村 正社員から非正規雇用への置き換えが構造的に進められた。この「構造」をどう評価するのか。

 首相 デフレの悪循環のなかで厳しい雇用状況になったことと合わせて、労働者のニーズも変化し(非正規雇用が)増加した。

 田村 政策によって非正規雇用を増やしてきた。そこへの反省が何もない。

 昨年度、能力開発・スキルアップ教育を非正規労働者に行った事業所は3割、正社員に行った企業は7割と、大きな格差があります。田村氏は、非正規雇用がいまや4割近く、女性労働者の5割を占めるなかで、「最初から教育の対象外、将来を期待しないと言っているのに等しい」「これで経済が成長するのか」と批判しました。

 田村 事務職、窓口業務、接客業、医療や福祉、公務などが、低賃金で短期契約の非正規雇用に支えられている。この「構造」はそのままでいいのか。

 首相 非正規を望まない方に対しては、さまざまな支援の制度を用意している。

 田村氏は「短期間の雇用契約は人生を細切れにされているのと同じで、生涯にわたり大きな影響を与えてしまう」「最低賃金1500円、安定した働き方を希望する人に無期雇用を保障する。これは最低限の政治の責任だ」と強調しました。

大軍拡

田村 「ミサイル防衛で軍縮」むしろ安全保障厳しく

首相 現時点で確定的に答えられない

 軍事・外交分野に質問を移した田村氏は、軍事費の2倍化、トマホーク500発購入計画、「敵基地攻撃能力」の保有を「不可欠」とする政府有識者会議の報告書提出―など、大軍拡に突き進む岸田政権の姿勢を痛烈に批判。有識者会議報告書は、「憲法9条に基づいて歴代の政府ができないとしてきたことを百八十度転換する、まるで『軍事国家』『戦争国家』づくりの青写真だ」と断じました。

 その上で田村氏は、「安全保障環境が厳しさを増す状況」の背景に日本が進めてきた「ミサイル防衛」の開発・配備があると指摘。日本共産党の赤嶺政賢議員が2001年6月の衆院安全保障委員会で、「ミサイル防衛」により「軍拡競争が再燃する」と警告したことに対し、中谷元防衛庁長官(当時)が「(ミサイル防衛で)軍縮につながる」と答弁していたことを紹介し、「ミサイル防衛」は軍縮につながったのかとただしました。

 首相 現時点では確定的に答えられない。

 田村 (北朝鮮の)核開発も止まらず、軍縮どころか安全保障環境が厳しくなった。

 田村氏は、相手国を攻撃できるミサイルを配備する「敵基地攻撃能力」の保有で、周辺国の日本に対する見方を変えてしまい、想像を絶する大軍拡競争を招き、深刻な「安全保障のジレンマ」に陥ると警告しました。

 田村氏は、軍事力の強化ではなく、外交で戦争を防ぐ国際社会の取り組みに言及。トルコのイスタンブールで先月開かれた「第11回アジア政党国際会議」で全会一致で採択された「イスタンブール宣言」が、軍事ブロックで分断、相手を排除する「ブロック政治を回避」「対話と交渉こそが紛争解決唯一の道」と明記したことを紹介しました。

 田村 「ブロック政治を回避」との文言に賛同するか。

 首相 国際社会は分断でなく団結することが重要だ。

 田村 排除でなく「包摂的」にまとまろうというのが宣言だ。

 田村氏は、岸田首相が参加した先月の東アジアサミットで、朝鮮半島情勢について「すべての関係当事国の平和的な対話の継続」「関係当事国間の平和的対話に資する空気の増進」が議長声明に盛り込まれたことを指摘し、「賛同するか」と質問。岸田首相は、「カンボジアが議長国の権限で発したもので、個々の文言に答える立場にない。『対話の道』は重要との姿勢は一致する」と答えました。

 田村氏は、議長が勝手にまとめたものでなく、首脳が集まり協力し話しあった上で出された声明だと主張。大軍拡の中身や財源も示さないのは「認められない」と述べ、軍拡ではなく外交努力をつくした平和の追求を説きました。


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