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2022年12月2日(金)

きょうの潮流

 真新しい折り鶴が、そっと置かれていました。白菊が飾られた碑の横に。中央自動車道下り初狩(はつかり)パーキング。そこに建立された追悼施設には人びとが訪れ、手を合わせていました▼中央道笹子トンネルの天井板が崩落し9人が亡くなった事故から、きょうで10年。犠牲者のなかには東京都内の同じシェアハウスに住んでいた20代の会社員5人がいました▼山梨県内の温泉などを訪れ、帰る途中の悲惨でした。どうして、娘や息子が事故にあわなければならなかったのか、なぜ、起きたのか―。遺族の問いかけは今もつづいています▼中日本高速からは安全対策を怠ってきた理由も、点検や管理の不備が起きた説明もされず、関係者は全員不起訴。役員の責任も問われず「納得できるわけがない」。こんな事故をくり返してはならないと遺族たちは結束し、真相を追求してきました▼事故後、国は5年に1度、トンネルや橋の点検を義務化しました。しかし予算や担い手の不足で必要な修繕は進まず、同様の事故が起きる危険と隣りあわせの状況がつづきます。全国で橋は70万以上、トンネルは1万カ所をこえ、その多くが老朽化にさらされています▼〈五人の親うち揃(そろ)ひ誓ひてし 原因・責任・再発防止〉。遺族の親のひとりが短歌に込めた思いです。新規建設ばかりに目をむけ安全を怠る企業、インフラよりも軍備に予算をつぎ込む国。だれもが願う安心してくらせる社会。今も、さまざまな人生や命を乗せた車が、あのトンネルを通っています。


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