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2022年11月26日(土)

主張

離婚後共同親権

拙速な導入でなく議論尽くせ

 法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会が15日、離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」導入を選択肢の一つとした中間試案をまとめました。12月からパブリックコメント(意見公募)を行い、答申を目指します。

懸念と不安の声は尽きず

 現行民法は、婚姻中は両親の共同親権、離婚後はどちらか片方の単独親権と定めています。中間試案は、共同親権を導入する案と単独親権を維持する案を併記しました。共同親権を導入する場合は、(1)原則共同親権で一定の要件を満たせば単独親権も認める(2)原則単独親権で一定の要件を満たせば共同親権も認める(3)具体的要件を定めず個別に単独か共同かを選択可能にする―の3案を示しました。

 共同親権をめぐっては、離婚後もDV(配偶者間の暴力)や虐待が続く恐れがあるなどの理由で、強い反対と不安の声があります。別居親が子の意思に反するような面会交流の権利を主張したり、進学・就職、手術・治療などの重要事項について双方の意見が合わず、子に不利益が生じたりすることへの懸念も相次いでいます。

 日本乳幼児精神保健学会は6月の声明で、「日々子どもの世話をする同居親が交渉と同意取り付けに疲れ果て養育の質が低下しないか」と述べ、共同親権導入に慎重な意見を表明しています。今月15日の部会でも、委員4人の連名で、拙速にとりまとめを行えば「深刻な負荷や軋轢(あつれき)が子本人や同居親非同居親にもたらされる恐れがある」との「強い懸念」が、文書で意見表明されました。

 「離婚後も父母双方が子の養育に責任を持つべきだ」とする共同親権への賛成意見があります。そのこと自体は大切ですが、父母が冷静・対等に話し合える関係にあれば現行制度でも共同養育は可能であり、実際に行われています。

 面会交流や養育費の支払いの促進を期待する声もあります。しかし、これらは親権制度とは関係がありません。促進のためには、面会交流の決定・実施を支える家庭裁判所の体制強化や民間団体の取り組みに対する公的サポートの充実、養育費の国による立て替え払い、取り立て援助制度の実現などをこそ、急ぐ必要があります。

 見過ごせないのは、別居親の権利を重視する自民党の共同親権推進派が、法制審部会が8月にまとめた中間試案に横やりを入れ、共同親権の導入をより鮮明にした案への変更を迫り、取りまとめと意見公募の開始時期を延期させたことです。審議会の独立性を侵し、政治介入で国民的議論の土台を強権的にゆがめるやり方は許されません。

家制度の名残見直しこそ

 「親権」という言葉には“親が子を思い通りにする権利”という響きがあります。民法の条文上も、子は「父母の親権に服する」(818条)となっています。これは戦前の明治民法下で戸主が家族を支配していた時代の名残です。

 日本共産党は、子どもの権利擁護の立場から「親権」そのものを見直す民法改正を行うことを求めています。“子は親の所有物”とみなすような誤った認識が広く残るもと、離婚後共同親権の導入を拙速に進めるべきではありません。子どもが安心・安全な環境で育つ権利の保障を中心に据え、議論を尽くすべきです。


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