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2022年11月24日(木)

主張

有識者会議報告書

安保政策の危険な転換許すな

 岸田文雄首相が設置した「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が22日、軍事力の抜本的強化に関する報告書を首相に提出しました。報告書は、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有とともに、軍事力強化の財源として「国民負担」の必要性を強調しました。岸田政権はこれを踏まえ、年末の国家安全保障戦略など安保3文書の改定に向け、議論を加速させる構えです。東アジアの軍事緊張を一層激しくし、日本国民の暮らしを圧迫する危険なたくらみを許してはなりません。

「反撃能力」保有明記

 報告書は、日本周辺の「厳しい安全保障環境」を口実に「5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならない」としています。同時に「日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸」だとして、米国の核戦力を含めた「拡大抑止」や、自衛隊基地の共同使用など日米の「共同対処能力」の強化をうたっています。

 日本の敵基地攻撃能力については「我が国の反撃能力の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠」だとし、国産ミサイルの改良や外国製ミサイルの購入などにより「今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべき」だと求めています。

 「抑止力の向上」を理由に軍事力を増強すれば、相手国は対抗策に乗り出し、結果として脅威を一層高める「安全保障のジレンマ」、際限のない軍拡競争を招くことは明白です。しかも、敵基地攻撃能力の保有は、集団的自衛権の行使を認めた安保法制の下、米国が日本周辺で戦争を始めれば、日本は攻撃を受けていないのに、自衛隊が米軍を支援するため相手国をミサイル攻撃することなども可能にします。それは日本への報復攻撃を呼び込むことになります。

 報告書には、敵基地攻撃能力の保有以外にも、憲法9条の下で制約されてきた施策の解禁が盛り込まれ、戦後安保政策の大転換が図られようとしています。

 武器輸出に関し「制約をできる限り取り除き、我が国の優れた装備品等を積極的に他国に移転できるようにする」などし「海外に市場を広げ、国内企業が成長産業としての防衛部門に積極的に投資する環境をつくることが必要」だと指摘しています。政府内では既に殺傷兵器の輸出を解禁する検討に入っていると報じられています。

 また「政府と大学、民間が一体となって、防衛力の強化にもつながる研究開発を進めるための仕組みづくりに早急に取り組むべき」だとし、科学技術の軍事利用の推進、軍学共同の体制づくりが狙われています。

「国民負担」で大軍拡

 報告書が軍事力強化の財源について「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」とし、増税を主張していることも重大です。「幅広い税目による負担が必要」としつつ、「多くの企業が国内投資や賃上げに取り組んでいるなか、こうした努力に水を差すことのないよう」にすべきだと法人税を対象にすることに否定的な考えを示しており、所得税などの大幅増が狙われる危険性が大きくなっています。

 平和と憲法を壊し、暮らしを押しつぶす大軍拡の道を何としても止めなければなりません。


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