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2022年11月20日(日)

戦争の心配のないアジア、核兵器のない世界をめざして

アジア政党国際会議第11回総会への公式文書発言

日本共産党幹部会委員長 志位和夫

 日本共産党の志位和夫委員長は18日、アジア政党国際会議(ICAPP)第11回総会で「戦争の心配のないアジア、核兵器のない世界をめざして」と題し発言しました。ICAPP事務局に提出した公式の文書発言は次の通りです。太字部分は、総会宣言案への提案部分です。


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(写真)18日、トルコ・イスタンブールで開かれたICAPP総会で発言する志位和夫委員長(鎌塚由美撮影)

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(写真)ICAPP第11回総会の全体会合=18日(鎌塚由美撮影)

 尊敬する議長、親愛な友人のみなさん。

 私は、日本共産党を代表して、第11回アジア政党国際会議(ICAPP)の開催を祝福するとともに、アジアの全域から参加された友人のみなさんに、心からのあいさつを送ります。

 今回の総会のメインテーマ―「世界の平和、繁栄、協力をめざす対話の強化に向けた政党の役割」を歓迎し、「戦争の心配のないアジア、核兵器のない世界をめざして」と題して発言いたします。

ウクライナ問題――国連憲章の擁護、対話と交渉による平和的解決の声を発信しよう

 友人のみなさん。

 今回の総会は、この美しい黒海の北で大規模な戦争が続くなかで開かれています。ロシアが今年2月に始めたウクライナへの攻撃は、武力行使を禁じた国連憲章に違反した明白な侵略です。多数の民間人、原発を含む発電所、病院など社会インフラへの無差別の攻撃は、国際人道法に反する戦争犯罪です。一部のウクライナ領土の一方的なロシアへの併合は、国連憲章と国際法に反するものであり無効です。人類を人質にとった核兵器の先制使用の威嚇は、国連憲章および核兵器禁止条約に反し、世界を破滅に導きかねない危険な動きであり、広島・長崎の惨禍を身をもって体験した被爆国の政党として、絶対に容認することはできません。

 10月12日に開催された国連総会の緊急特別会合は、ロシアによる併合決定の撤回、ロシア軍の即時・完全・無条件撤退を求める決議を、加盟国の約4分の3にあたる143カ国の圧倒的な賛成多数で採択しました。私は、この決議を心から歓迎するとともに、ロシア政府がこの決議に従うことを強く求めます。

 国連総会決議が、戦争のエスカレートと犠牲者の拡大を抑え、人道危機を打開するために、ウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、対話と交渉など平和的手段による平和的解決を呼びかけたことは、きわめて重要です。

 ICAPPは過去の総会宣言において、国連憲章と国際法の順守にもとづくアジアと世界の平和構築の重要性を繰り返し確認してきました。今回の総会のメインテーマも、世界平和をめざす「対話の強化に向けた政党の役割」とされています。そこで私は、国連総会決議を踏まえ、総会宣言に次の内容を盛り込むことを提案するものです。

 「ウクライナの事態を深く憂慮し、総会は、国連憲章の諸原則に従い、国際的に認められたウクライナ国境内でのウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、政治的対話、交渉、調停およびその他の平和的手段による平和的解決をはかることを要請する」

 イスタンブールの地から、アジアの政党の総意として、国連憲章の擁護、対話と交渉による平和的解決の声を、国際社会に発信しようではありませんか。

戦争の心配のないアジアへ――地域のすべての国を包摂する平和の枠組みの発展を

 友人のみなさん。

 それでは、いかにして戦争の心配のないアジアをつくるか。

 私たちのすむアジア大陸にも、さまざまな緊張や紛争の火種が存在しています。しかし、大局で見るならば、この大陸には、20世紀から21世紀にかけて、「分断と敵対」から「平和と協力」への歴史的転換の流れが起こっています。そうした歴史的転換を最も進んだ形で劇的に体現しているのが、東南アジアの国ぐにの取り組みです。

 私たちはこの間、東南アジアの国ぐにを繰り返し訪問し、また、ICAPP総会に参加したおりに、東南アジアの諸政党と交流し、この地域に平和の激流ともいうべき大きな変化が起こっていることを目の当たりにして、目をみはる思いでした。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)は、国連憲章の原則にもとづき武力行使の放棄と紛争の平和解決を義務づけた東南アジア友好協力条約(TAC)を土台に、徹底した対話によって信頼醸成をはかり、友好と協力を推進し、紛争を解決していくという半世紀の歴史の積み重ねによって、ベトナム戦争のときには、「分断と敵対」が支配していたこの地域を、「平和と協力」の地域に生まれ変わらせました。

 私たちが、強い期待を寄せているのは、ASEANが、東南アジアの域内を平和の地域にしただけではなく、平和の流れをASEAN域外にも広げ、世界平和の一大源泉として大きな役割を発揮しているということです。

 その最新の到達点として、私たちが注目しているのは、2019年のASEAN首脳会議で採択された「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)です。この構想は、東南アジア友好協力条約(TAC)の「目的と原則を指針」として、「対抗でなく対話と協力」を推進し、東アジアサミット(EAS)を東アジアの平和と協力の機構として強化し、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望しようという壮大な構想です。

 私たちは、この構想に全面的に賛同するものです。

 そして、私たちは、この構想の何よりもの重要な意義は、あれこれの国を排除して包囲するという排他的枠組みでなく、地域のすべての国を包み込む包摂的な平和の枠組みをつくるというところにあると考えています。

 現実に、東アジアサミット(EAS)には、ASEAN10カ国にくわえて8カ国―日本、米国、中国、ロシア、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドが参加しています。そして、これらのASEANのパートナー諸国をはじめ、国際社会の幅広い国ぐにが、AOIPへの支持を表明していることは重要です。

 以上を踏まえて、私は、総会宣言に次の内容を盛り込むことを提案するものです。

 「総会は、アジアで戦争を決して起こしてはならず、国連憲章および国際法の諸原則に従い、紛争を平和的・政治的に解決する決意を表明する。東南アジア諸国連合(ASEAN)が2019年の首脳会議で採択した『ASEANインド太平洋構想』(AOIP)を支持する。東アジアサミット(EAS)を、地域のすべての国を包摂する平和の枠組みとして強化し、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望することが、戦争の心配のないアジアをきずく道である」

 「排除の論理」に立ち、軍事に軍事で対抗するという悪循環に陥ってはなりません。「包摂の論理」に立ち、国連憲章と国際法の諸原則に従い、紛争を平和的・政治的に解決していく努力を積み重ね、地域のすべての国を包み込む平和の枠組みを発展させる―私は、ここにこそ戦争の心配のないアジアをつくる大道があると確信するものです。

核兵器禁止条約を歓迎し、「核兵器のない世界」への努力と決意を世界に発信しよう

 友人のみなさん。

 最後に、私は、アジアと世界の平和、人類の生存にとって重大な脅威となっている核兵器の問題について述べたいと思います。

 いま世界の国ぐにと人びとは、核兵器使用の現実的脅威が高まっていることを深く懸念しています。私は、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への強い懸念を共有し、本総会の総意として、核兵器の使用は絶対に許さないとの意思を、世界に発信することを強く呼びかけるものです。

 核兵器の使用を防ぐ唯一の保障は核兵器廃絶です。ICAPPは、これまで、「核兵器のない世界」の実現を、繰り返し呼びかけてきました。09年の「アスタナ宣言」は、「あらゆる地域で核兵器のない世界を目標にすべきだ」と世界に呼びかけました。10年の「プノンペン宣言」は、「核兵器禁止条約(NWC)の交渉を支持する」ことを明記しました。14年の「コロンボ宣言」は、さらに進んで、「核兵器禁止条約の速やかな交渉開始を求める」と明記しました。

 こうしたICAPPの努力が、17年7月の核兵器禁止条約の成立、21年1月の核兵器禁止条約の発効への一つの貢献となったことを、私は、参加された多くの友人たちとともに、喜びたいと思います。

 そして、総会宣言に、次の内容が盛り込まれることを提案するものです。

 「総会は、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への深い懸念をもち、核兵器の使用は絶対に回避されるべきであると訴える。総会は、核兵器禁止条約の発効とその第1回締約国会議の開催を歓迎し、これまでのICAPP総会で繰り返し確認されてきた『核兵器のない世界』に向けて、いっそうの努力と決意を表明する」

 イスタンブールの地から、アジアの政党の総意として、「核兵器のない世界」を実現する力強いメッセージを、世界に発信しようではありませんか。


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