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2022年11月20日(日)

きょうの潮流

 妖怪を世に送り出した漫画家は戦記物を描くとき、わけのわからない怒りがこみ上げてきて仕方がありませんでした。自身が味わった戦争や軍隊の理不尽さ、死んでいった仲間の無念がそうさせたのではないかと▼いま東京・調布市で「水木しげるが見た光景」と題する展示会が開かれています。水木さんが93歳で亡くなるまで長く住み漫画を描き続けた地。11月30日の命日には「ゲゲゲ忌」が開催され、生誕100年の今年は多彩なイベントが催されています▼平和祈念とも銘打たれた展示には鬼太郎たちとともに戦争の実態を描いた作品が並べられています。実体験を元にした「総員玉砕せよ!」の構想ノートも初公開され、水木さんの表現世界や思いを感じとる機会に▼去年発見されたノートには漫画では描かれなかった作品への決意が記されていました。「人間の生き死にははかないものである(中略)殺りくの記録はここの石と木だけが知っている。いまここに書きとどめなければ誰も知らない間に葬り去られるであろう」▼いまだ戦火のやまぬ世界にあって、無残にも奪われていく幾多の命。水木さんの戦争や人生観にふれるなかで平和の大切さを見つめ直し、思いを継ぐきっかけになればと主催者はいいます▼戦場で片腕を失いながら生きることをあきらめなかった水木さん。体中から発した戦争の愚かさ、日常にある平和の尊さをさらに。生死をさまよいながら、子どもたちに夢と希望を与えた漫画家の100周年に込めた願いです。


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