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2022年11月17日(木)

主張

東京五輪汚職事件

国・都は徹底解明の責任果たせ

 東京五輪・パラリンピックの汚職事件で東京地検特捜部は、五輪組織委員会元理事の高橋治之被告を先週、追起訴しました。同被告の受託収賄罪での起訴は4回目となり、立件された賄賂総額は2億円近くにのぼります。贈賄罪で大手企業のトップらも起訴されました。世界最大級のスポーツイベントが、大規模な汚職の舞台にされていたことは重大です。五輪には税金が投じられています。利権を生んだ構造そのものに徹底してメスを入れなければなりません。五輪を推進した日本政府と東京都にはその重い責任があります。

不正許した温床根絶せよ

 高橋被告には五つの企業から金が渡ったとされます。紳士服大手「AOKIホールディングス」の青木拡憲前会長、出版大手「KADOKAWA」の角川歴彦前会長、大手広告会社「ADKホールディングス」の植野伸一前社長をはじめ、広告会社「大広」や玩具会社「サン・アロー」の役員ら12人が贈賄罪で起訴されました。

 五輪組織委の理事は「みなし公務員」で、職務に関する金品受領が禁じられています。高橋被告は、大会スポンサーの選定や公式商品の審査などで便宜を図った疑いが持たれています。高橋被告は、スポーツビジネス界で「国内1強」といわれる広告最大手「電通」元専務です。電通は、組織委でスポンサー募集に携わるマーケティング局に多数の社員を出向させました。高橋被告が電通OBの影響力を背景に、不正な利益を得ていた構図が浮かびます。検察は電通本社も家宅捜索しました。電通の関与の究明は不可欠です。

 組織委の統治能力の欠如も批判を浴びています。スポンサー契約などを事実上電通に丸投げし、選定過程などのチェック機能は働きませんでした。国民が情報を知ることができない仕組みは大問題です。スポンサー契約料も明らかにされず金額の妥当性などの検証もできないことが、不正の温床になったことは間違いありません。

 組織委は日本オリンピック委員会(JOC)と東京都が設立した公益財団法人で情報公開制度の対象外とされますが、巨額な公的資金を投じた五輪の運営が「ブラックボックス」のままでは、国民は納得できません。組織委は6月に解散し、どこも責任を取ろうとしていません。開催都市の東京都も岸田文雄政権も解明に動こうとしないことは極めて重大です。

 スポーツ庁は18日に大規模スポーツ大会の組織運営を協議するチームを発足させますが、汚職事件にどこまで踏み込めるのか不透明です。必要な情報は全面的に開示されなければなりません。組織委のあり方や運営方法の徹底検証ができるかどうかが問われます。

一連の疑惑全て明らかに

 捜査の過程で組織委の会長だった森喜朗元首相とJOCの竹田恒和前会長も検察から事情聴取されました。両氏は高橋被告と贈賄側の企業トップらとの会食に複数回同席したと報じられています。

 竹田前会長は高橋被告と深いつながりがあるとされ、東京五輪招致をめぐる金銭疑惑でも名前が浮上しました。竹田前会長は2018年にフランスの捜査当局に事情を聞かれました。招致経過をはじめ数々の疑惑を置き去りにしたまま、30年の札幌冬季五輪招致を推し進めることは許されません。


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