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2022年11月16日(水)

きょうの潮流

 ゴッホ、セザンヌ、黒田清輝、青木繁等々。古今東西の少なからぬ画家たちが自画像を残してきました。作品は見る側と深く対話するように語りかけてくるものがあります▼テレビの自画像を克明に描いたドラマが現れました。フジ系の「エルピス」。舞台はテレビ局。長澤まさみふんする落ち目のアナウンサーが主人公で、えん罪事件を追っていきます▼平然と飛びだすパワハラ、セクハラ発言。慣れっこにもなっている職場で、ヒロインはセンセーショナルな報道がえん罪に加担することになったと気づきます。自身が取材したものを独断で放送しようと挑む姿は、ウクライナに侵略するロシアのテレビ局で反戦を訴えた女性ディレクターのことが思い起こされます▼原発汚染水をめぐる状況は「コントロールされている」。安倍元首相の演説をそのまま流して、東京オリンピック開催になだれ込んでいく。描かれるのはテレビのありのままの現状です。自画像を映すことは業界ではタブーとされてきたことでもあります▼ドラマは6年前から企画が始動。渡辺あやが脚本を手がけ、キャスティングも進んでいましたが、当時女性プロデューサーが所属していたTBSに受け入れられませんでした。プロデューサーが関西テレビに移籍して、今回の放送にこぎつけたといいます▼沈黙して、やり過ごしたくない。制作陣の並々ならぬ覚悟を感じます。記録(視聴率)に残るより、記憶に残るドラマを。結実するかどうかは、視聴者に委ねられています。


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