2022年11月12日(土)
主張
葉梨氏の法相辞任
任命した首相の責任問われる
自分の閣僚としての仕事を「死刑のはんこを押す時だけニュースになる」などと発言し、批判を浴びた葉梨康弘法相が辞任しました。岸田文雄政権では、統一協会との関係について言い逃れができなくなった山際大志郎前経済再生担当相が10月24日に辞任に追い込まれています。自らの言動について閣僚としての資質が問われ、3週間足らずに2閣僚が辞めるのは異常事態です。8月の内閣改造で「経験と実力を兼ね備えた」といって適格性が問われる閣僚を任命した首相の責任は極めて重大です。
死刑制度を冗談の材料に
葉梨氏の暴言は9日の都内での自民党岸田派所属の衆院議員の政治資金集めパーティーでのものです。「法相というのは、朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職なんです」などと語りました。
国家権力が人の命を奪う死刑制度への深刻な認識を欠落させた許し難い発言です。死刑はいったん執行されてしまえば、後になって誤判や冤罪(えんざい)が明らかになっても取り返しがつかない制度として批判され、世界では廃止が大勢になっています。
人命にかかわる死刑制度を、冗談の材料に持ち出すこと自体、政治家としての見識と感覚が疑われます。ましてや法務行政に責任をもつ閣僚として、これほど不真面目極まる発言はなく、法相としての資格がないことは明白です。
葉梨氏は「死刑のはんこを押すだけ」との発言を、都内のパーティーで4回、地方の会合で複数回行っていました。持論であることは疑う余地はありません。8月10日の内閣改造で葉梨氏を「2度にわたり法務副大臣を歴任し、衆院法務委員長としても豊富な法務行政経験を持つ」と持ち上げて、初入閣させた岸田首相の任命責任が厳しく問われます。
葉梨氏が先のパーティーで「今回はなぜか旧統一教会の問題に抱きつかれてしまった」とやゆしたことも大問題です。首相は内閣改造の際、法相の仕事として、悪質商法などの不法行為の相談や被害者救済に万全を尽くすことを挙げていました。葉梨氏の言葉は、その重い職責への自覚を欠いただけでなく、統一協会の反社会的行為によって被害を受けた人の苦しみを全く理解していない無責任な姿勢を示しています。
「法相になっても、お金は集まらない、なかなか票も入らない」との葉梨氏の発言に、閣僚ポストを金や票集めの手段としかみなしていないと批判が集まりました。しかし当初、同部分の発言撤回を拒み、「法務省は企業との付き合いもそれほどなく、政治資金はなかなか集めづらい」と正当化しました。11日に全ての発言を撤回したものの、閣僚としての資格のなさは浮き彫りになるばかりです。
寺田氏の居座り許されぬ
岸田首相は11日午前の国会審議でも葉梨氏をかばいました。その直後、事実上、更迭せざるをえなくなったのは、世論の批判に耐えられなくなったためです。葉梨氏と同じ岸田派に所属する寺田稔総務相も政治資金問題をめぐり閣僚辞任を求める声が相次いでいます。秋葉賢也復興相も不透明な政治資金の流れが追及されています。疑惑を抱える閣僚を擁護する政権は国民の信頼を失うだけです。








