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2022年11月10日(木)

主張

大量雇い止め

研究者の“使い捨て”を許すな

 数千人に及ぶ国立の大学・研究機関の任期付き研究者が、来年3月末に労働契約の更新を拒否され、雇い止めとなる危険にあります。世界的な科学誌『ネイチャー』なども“何千人もの研究者が使い捨ての危機”との見出しで報じました。研究者らが「STOP雇い止め」と訴えるネット署名に取り組み、世論と運動は広がっています。日本共産党国会議員団も国会で雇い止め阻止を求めています。

脱法行為させない指導を

 2013年の労働契約法の改正で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた時、労働者が申し込みをすれば、無期労働契約に転換することを使用者は義務づけられました(無期転換ルール)。14年、研究者の無期転換権の発生は、通算10年に延長されました。

 文部科学省の調査(5月)では、来年4月に有期雇用期間が10年となる国立の大学・研究機関の任期付き研究者は4489人いることが判明しました。一部の大学・研究機関は、無期転換ルールの適用を意図的に避けるために、無期転換権が発生する前に雇い止めを強行しようとしています。これは労働契約法の趣旨に反しています。国は脱法行為を許さぬよう指導を強めるべきです。

 とりわけ悪質なのは約400人の雇い止めの強行を狙う理化学研究所です。理研は16年に無期転換逃れのために、事務職員には5年、研究系職員には10年の通算雇用上限を労働組合の反対を無視して押し付けました。その起算日は13年に遡及しています。厚生労働省は「有期労働契約の締結後に新たに更新上限を設けることは労働条件の不利益変更にあたる」と国会で答弁しています。労働契約法9条は、使用者は労働者の合意なしに、労働者に不利益な労働契約の変更はできないと定めています。不利益変更で押し付けた雇用上限を口実にして、無期転換逃れのために雇い止めを強行するのは違法に違法を重ねる暴挙です。

 研究チームリーダーが雇い止めになれば、研究チームも解散となります。その数は42にのぼり、多くは科学研究費や産学連携などの外部資金によるプロジェクト研究の途中です。体に負担をかけずに乳がんを早期に発見する技術、イスに座ったり寝ていたりする時などのゆっくりした人の動きで電力を生みだす小型発電機をはじめ、世界最先端の技術開発を行っている研究チームが含まれています。

 科研費を獲得した理研の研究者は7月、雇い止めの撤回と研究妨害の損害賠償を求めて、さいたま地裁に提訴しました。

 日本共産党の宮本徹衆院議員の国会質問に、文科省は研究機関だけでなく、研究者個人も対象にした調査を行っていると答弁しました(10月26日)。提訴した研究者も調査し、違法行為を許さないよう理研を指導すべきです。

 宮本議員は、雇い止めの根本原因は国による運営費交付金の削減にあるとして、補正予算の中で無期転換を促進するための予算を計上することを提案しました。

研究力低下に拍車かける

 研究者の大量雇い止めを放置すれば「研究力の低下」「頭脳流出」に拍車をかけるのは必至です。政府は、「科学技術立国」実現を掲げるのなら、研究者の雇い止めをやめさせるためにあらゆる手だてを講じなければなりません。


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