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2022年11月9日(水)

対中国想定 米シナリオ 離島奪取作戦 列島全域で

変質する日米合同演習

 米軍と自衛隊が一体で「台湾有事」など対中国を想定した合同演習が相次いでいます。10月1~14日、米海兵隊と陸上自衛隊が実施した「レゾリュート・ドラゴン22」(RD22、北海道矢臼別演習場など)は、東シナ海・南シナ海で離島を奪取し、ミサイル攻撃と進出の拠点を構築する「遠征前進基地作戦(EABO)」の大規模演習でした。米軍と一体の演習で「敵基地攻撃」行使へ危険な変質がいっそう進んでいます。(佐藤つよし)

前進基地を構築

 EABOは、米軍の接近を阻止し領域内への侵入を拒否する敵の長距離火力射程内に進出して「前進基地」を構築する作戦です。▽対中国作戦を想定し、日本列島、南西諸島、台湾、東南アジアを結ぶ中国の防衛ライン「第1列島線」内の離島を奪取▽米海兵隊の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)などで中国軍の艦船や航空機の行動を阻止し、海軍とともに制海権を確保▽電子・情報・サイバー戦の実施、給油や兵站(へいたん)拠点、飛行場の設置など侵攻作戦の継続を支援―することが目的です。

 RD22には米海兵隊約1600人、陸上自衛隊約1400人が参加。米海兵隊のMV22オスプレイは、低空飛行や兵員投入・空中強襲訓練を実施。海兵隊のハイマースと陸自の多連装ロケットシステム(MLRS)が矢臼別演習場で実弾射撃訓練を行いました。

低空飛行も実施

 演習は北海道だけでなく、日本列島全域で米軍基地などを利用し繰り広げられました。米海兵隊のMV22オスプレイは、敵レーダーを回避する日本の航空法の最低安全高度基準以下の300フィート(約90メートル)の低空飛行も実施。航跡を追跡した京都平和委員会によると、飛行は青森、岩手両県まで及びました。

 空軍特殊作戦機CV22オスプレイは横田基地(東京都)から長距離飛行し特殊作戦部隊を投入する訓練をしました。オスプレイやヘリは、普天間基地(沖縄県)からの中継に厚木基地(神奈川県)を使用しました。

 海兵隊ハイマースや車両は、岩国基地(山口県)の海兵隊KC130J空中給油機を使い別海駐屯地内の計根別(けねべつ)飛行場に沖縄から空輸されました。同飛行場では、C130やC17輸送機が着陸可能な飛行場を建設する飛行場修復訓練も初めて行われました。

 今月10日からは自衛隊約2万6000人、米軍約1万人にオーストラリア、カナダ、イギリスの艦船も参加した日米共同統合実動演習「キーン・ソード23」が始まります。

写真

(写真)レゾリュート・ドラゴン22に参加した米海兵隊HIMARS(左手前)と陸自MLRS(右奥)=10月4日、矢臼別演習場

米アジア戦略に日本動員

 10月1~14日に北海道内の演習場・自衛隊基地などで行われた米海兵隊と陸上自衛隊の合同演習「レゾリュート・ドラゴン22」(RD22)は米海兵隊と海軍が、東シナ海・南シナ海に進出し対中国を想定して計画する「遠征前進基地作戦」(EABO)を日米一体で実行する本格的な演習となりました。

米比演習も実施

 米海兵隊は、RD22と同時にフィリピンで陸自や韓国軍も参加した米比合同演習を実施。日本列島から東シナ海・南シナ海までを囲む中国の防衛ライン「第1列島線」全体での主要な同盟国との二つの大規模2国間演習だと位置づけました。

 RD22では、離島奪取と陸上からの攻撃を担う「沿岸海兵連隊」(MLR)への転換をすすめる第12海兵連隊司令部(沖縄、キャンプ・ハンセン)が指揮部隊として参加。MLRは、1800~2000人の部隊で、オスプレイなどによる空中強襲で離島攻撃・奪取し、海上・航空阻止作戦を担います。インド太平洋地域にはハワイに1個、沖縄2個の計3個を編成します。

 第12海兵連隊司令官のジョナサン・シムズ大佐は、RD22について第1列島線内で「自衛隊の同志が、あらゆる侵略行為や現状変更の企てを打ち破ることを支援する」(10月17日付、米海軍ニュース)と述べました。

 陸上に配置する海兵隊の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)とともに海上からのトマホークミサイルで長距離火力攻撃を担う第15駆逐戦隊(神奈川・横須賀基地)のイージス駆逐艦ベンフォールドが参加。三沢基地(青森県)には、岩国基地(山口県)のF35B戦闘機が展開しました。

兵站支援を強化

 第15駆逐戦隊司令官のウォルター・メイナー大佐は「協力国・同盟国との既存の協力関係を土台に相互運用性を強化し、インド太平洋地域の安全という共通の目標を体現する訓練の継続は不可欠だ」と述べました。(同ニュース)

 今回の演習では海上からの兵站(へいたん)支援体制が大幅に強化されました。釧路港には、米海軍補給艦サカガウィアと洋上で車両や兵器などを保管し即応態勢をとる事前集積艦ダールが展開しました。サカガウィアからは、海兵隊のCH53E大型ヘリが演習場へ弾薬などを空輸。ダールは搭載してきた浮き桟橋として使える改良型海軍平底はしけ運搬システム艇で車両を輸送しました。

 海兵隊オスプレイや対地攻撃訓練をした攻撃ヘリに、矢臼別演習場内に設置した前方武器装てん・給油地点での給油なども行われました。


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