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2022年11月8日(火)

主張

生活保護基準

物価高に見合う引き上げ急げ

 急激な物価高が国民の暮らしを直撃し、所得の低い人ほど深刻な影響を受けています。とりわけ生活保護を利用する人たちは2013年からの保護基準引き下げなどによって、苦しい生活を強いられています。日本共産党国会議員団は4日、厚生労働省に基準引き上げと物価高騰に見合う保護費の増額、申請しやすい運用への改善などを求めました。基準引き下げについては、政府決定を違法とする司法判断が相次いでいます。憲法25条が明記する「健康で文化的な最低限度の生活」を国民に保障するため、岸田文雄政権は基準引き上げと増額を決断すべきです。

命と健康を脅かす危険も

 止まらない物価高騰に生活保護利用者は「これ以上どこを節約したらいいのか」と悲鳴を上げています。今夏も多くの利用者はエアコンを我慢したり、食事回数を減らしたりして支出を切り詰めました。健康を害した人も少なくありません。物価高はさらに進行する見通しです。10月の東京都区部の消費者物価指数は前年同月比3・4%と40年4カ月ぶりの上昇幅です。都市ガス代は29・3%、電気代は26・9%と大幅アップです。

 物価高騰以前から利用者は、13年に安倍晋三政権が決定して同年から15年に段階的に強行された生活保護基準引き下げによって苦しめられてきました。これは食費や光熱水費にあてられる生活扶助基準を平均6・5%、最大で10%引き下げ、利用世帯の96%に影響が及ぶ大規模な削減でした。

 10月19日、横浜地裁は基準引き下げ決定を違法とし、減額取り消しを命じる判決を言い渡しました。判決は、客観的な統計を見れば引き下げに根拠はなく、専門家の検討も経ていないと批判しました。これまでの判決と合わせ4地裁が減額を違法と断罪したことになります。国は誤りを認め、基準を直ちに元に戻さなければなりません。住宅扶助や冬季加算も13年以降、削減されており、それを元の水準に回復することも不可欠です。

 この間に廃止された老齢加算の復活、夏季加算の新設などを検討することも重要です。

 生活保護基準は、小中学生の就学援助や個人住民税の非課税限度額の算定や保育料の減免など約40の制度の基準にも連動しています。引き上げは国民のさまざまな分野で貧困対策の土台を強めることにもつながります。

 激しい物価高騰が続いた1973~74年には、生活保護基準引き上げなどの特別措置は6回行われています。当時の政府内には「被保護者に対して安心して越年できるようにする」などの議論があったとされます(厚生省社会局保護課編集『生活保護三十年史』)。岸田政権は、歴史に学ぶべきです。

生活と権利を守るために

 生活保護の申請をためらわせる要因になっている親族などへの扶養照会は廃止が必要です。生活保護利用者の大学・専門学校への進学を認めないのは、「世帯の自立という長期的な視点に欠け、違法」(10月3日、熊本地裁判決)と批判されました。生活保護を利用しながら学ぶ権利を保障する制度への改革が急がれます。

 物価高騰から国民を守るため、大幅賃上げ、消費税の減税などとともに、生活保護費や年金の引き上げを実行する政治に切り替えることが重要になっています。


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