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2022年11月5日(土)

主張

トマホーク導入

常軌を逸した軍拡への大暴走

 岸田文雄政権は、年末に予定する「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定に向けた作業を急ピッチで進めています。その最大の焦点である「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有をめぐり、岸田政権が、米国製の長距離巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診していることが分かりました。岸田首相は「反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず検討する」と繰り返すだけで結論を明らかにしていません。トマホーク導入の動きは、敵基地攻撃能力の保有を先取りし、既成事実化する重大な動きです。

戦争の火ぶたを切る

 トマホークは米軍が保有し、遠く離れた地上の目標を攻撃する精密誘導ミサイルです。イージス艦や原子力潜水艦から発射されます。米海軍のホームページによると、射程は1600キロに及びます。海上に展開できるため、北朝鮮全土や中国の主要都市も射程圏内に入ります。

 初めて実戦投入されたのは、1991年の湾岸戦争です。米国による2001年のアフガニスタン報復戦争や03年のイラク侵略戦争でも攻撃の第一撃として使用され、米軍横須賀基地(神奈川県)を母港にするイージス艦からも発射されました。文字通り、戦争の火ぶたを切る兵器です。

 「精密誘導」とされるものの、誤爆によって軍事施設だけでなく、民間地にも着弾し、罪のない一般市民も犠牲になっています。

 岸田政権が米国からトマホークを購入しようとしているのは、敵基地攻撃への転用も念頭に開発を進めている自衛隊の国産ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の実戦配備が26年度になる見通しだからです。

 防衛省は、同ミサイルの射程を1000キロ程度に伸ばすとともに、地上からだけではなく、艦船や航空機からも発射可能にしようとしています。それを待たずに、速やかに敵基地攻撃の態勢を取るのが狙いです。

 トマホークは、海上自衛隊が保有するイージス艦のミサイル垂直発射装置を改修すれば、運用可能になるとされます。

 しかも、岸田政権は、長距離ミサイルを発射できる潜水艦を保有するため「実験艦」を新造する方向で調整に入っており、実戦配備に進めば、トマホークの搭載も視野に入れると報じられています(「読売」10月29日付)。敵基地攻撃能力の保有に向けた異常な暴走というほかありません。

 度重なるミサイル発射など北朝鮮や中国による軍事挑発は決して許されません。しかし、これに対抗し日本が敵基地攻撃能力を持てば、軍事緊張はいっそう激化します。メディアも、長距離巡航ミサイルの保有について「いくら反撃のためだと主張しても、周辺国に先制攻撃の意図を疑われ、軍拡競争に拍車をかけかねない」(「東京」1日付)と警告しています。

報復攻撃を呼び込む

 敵基地攻撃能力の保有は、集団的自衛権の行使を認めた安保法制の下、米国が戦争を始めれば、日本は攻められていないのに、自衛隊が米軍とともに相手国を攻撃する危険を著しく高めます。それは日本への報復攻撃を呼び込むことになります。

 こうした企ては何としても止めなければなりません。


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