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2022年10月27日(木)

主張

イランのデモ弾圧

暴力をやめ女性らの声を聞け

 警察に拘束された女性の死亡事件を機に9月半ばからイラン全土で抗議デモが広がっています。政府は治安部隊を動員して抑え込みを図り、二百数十人が死亡したと伝えられます。弾圧に抗して、女性の人権擁護を求める声が内外で高まっています。イラン政府は暴力をやめ、国民の批判に耳を傾けるべきです。

広がるヒジャブ強制反対

 イランでは女性が公共の場所で髪を隠すことがイスラムの教えだとして、ヒジャブ(スカーフ)の着用が義務づけられています。つけ方が不適切だとして「道徳警察」と呼ばれる治安機関に拘束されたマアサ・アミニさん(22)が昏睡(こんすい)状態で病院に運ばれ、9月16日に死亡しました。

 警察は病気が死因と発表しましたが、暴行死を疑う人たちが抗議に立ち上がりました。ヒジャブ強制への抵抗は以前からありましたが、アミニさん死後、一気に広がりました。アミニさんが少数民族のクルド人だったことから民族差別による虐待も疑われています。

 デモの背景には、政治に対する国民の不満があるとみられます。イラン・イスラム共和国憲法は、イスラム教聖職者が選ぶ宗教指導者が「最高指導者」として国を指導すると規定しています。国民の選挙で選ばれた大統領はそれに次ぐ行政府の長とされます。昨年の大統領選挙では最高指導者ハメネイ師らが任命した機関が候補者資格を事前審査し、意に沿わない有力候補を失格させました。投票率は現体制下で最低でした。

 国連人権高等弁務官事務所はイラン政府に対して、アミニさんの死について独立機関による調査を要求し、デモに対する弾圧をやめるよう求めました。

 イランの人権問題はこれまでも国連で議題になってきました。イランの人権に関する国連の特別報告者が7月に国連総会に提出した報告は、当局による「恣意(しい)的な生命の剥奪」や、さまざまな罪に科される死刑、治安部隊の過剰な力の行使、拷問などを挙げました。

 9月21日に国連総会で演説したイランのライシ大統領は人権を巡る批判に反論する中で「一部の国の二重基準」を指摘しました。2020年に米軍がイランの軍事組織、革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害したことを「前米大統領による犯罪」と非難し、司法の裁きを要求しました。当時トランプ大統領が攻撃を命じたことを認めています。

 国連憲章と国際法を踏みにじって軍事力を行使する米国の無法は許されません。しかし、この件をもって、自由と平等を求める女性たちの運動に対する抑圧を正当化することはできません。

人権擁護は国家の義務

 国連憲章は人権と基本的自由の尊重を定めています。人権と自由の発展には国ごとにそれぞれの過程がありますが、すべての人権、基本的自由を保障することは「政治的、経済的、文化的体制のいかんを問わず、国家の義務」(ウィーン宣言)とされています。

 イランの憲法は、男女を問わず全国民の平等と人権を規定しています。ライシ大統領は国連で「イランには人権擁護の最も有効な仕組みがある」と述べました。そうであるならば、人権や女性に関する国際取り決めに即した行動が求められます。


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