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2022年10月23日(日)

統一協会問題 「これまで」の癒着の徹底調査こそ

許されぬ 論点そらし

 17~20日に開かれた衆参予算委員会で次々と明らかになった自民党と統一協会(世界平和統一家庭連合)との根深い癒着の実態―。しかし、岸田文雄首相は、肝心の自民党と同協会の癒着について責任をもった調査を拒否しつづけています。日本共産党の志位和夫委員長は「岸田首相の姿勢は、『これから』どうするかのみに焦点を当て、『これまで』の自民党と統一協会との深刻な癒着にはふたをするというものだ。これは卑劣な論点そらしだ」(20日、記者会見)と批判しました。多くの被害を生んだ癒着関係の調査、検証、反省なしに、岸田首相がいくら「関係を断つ」といっても実効性がありません。「これまで」の癒着関係の調査こそ必要です。


自民党の点検結果(追加報告を含む)
統一協会と接点があった議員 180
氏名を公表した議員 125
点検項目ごとの人数
会合への祝電など 99
広報紙でのインタビューなど 24
関連団体の会合であいさつ 102
会主催の会合への出席 13
協会や関連団体への会費類の支出 49
寄付やパーティー券などによる収入 29
選挙のボランティア支援 17
選挙支援の依頼や動員などの受け入れ

自民党の点検不備露呈

 「8分類にわたって行動を点検し、党として整理、集約する対応を取っている政党はわが党だけだ」―。岸田首相は18日の衆院予算委員会で、こう自画自賛して委員会室をざわめかせました。統一協会との接点をめぐる自民党の点検の不備は、衆参予算委員会中も次々と露呈しており、とても誇れる代物ではありません。

 自民党が、世論の厳しい批判に押される形で9月8日にようやく公表した点検結果では、379人の同党国会議員のうち179人(追加報告を含めて180人)が何らかの接点を持っていたことが判明しました。

 しかし、自己申告頼みの点検は、統一協会の最大の広告塔となった安倍晋三元首相や、細田博之衆院議長、地方議員は対象外。その上、点検後も次々と新たな接点が明らかになる議員が続出しています。

 その自民党の点検の不備を目に見える形で体現しているのが、山際大志郎経済再生担当相です。

 統一協会との接点を指摘されては後追いで事実関係を認める山際氏は、衆参両院の予算委でも「資料が発見できない」(17日)、「これから何か新しい事実が出てくる可能性はある」(18日)、「記憶にない」「事実として覚えていない」(19日)などと無責任な答弁を連発。しかも、統一協会トップの韓鶴子総裁と2019年に愛知県内で集合写真を撮影していた事実まで明らかとなり、21日には後追いで認めざるをえなくなりました。

 統一協会とのズブズブの実態を「赤旗」日曜版にスクープされた井野俊郎防衛副大臣兼内閣府副大臣も、点検結果には名前すらありませんでした。

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(写真)質問する山添拓議員=20日、参院予算委

 日本共産党の山添拓議員は20日の参院予算委で、統一協会関係者にパーティー券を購入してもらった事実を追及。井野氏は「資料がなく確認できていない」としながら、「適切に処理した」と言い張りました。

 統一協会は、正体を隠した「伝道」活動、霊感商法や高額献金、当事者の意思を無視した集団結婚など、数々の反社会的活動を行い、いずれも違法との判決が確定している反社会的団体です。しかも、毎年数百億円を日本から韓国教団本部に送金してきた反国民的団体でもあります。その統一協会の権威づけに自民党議員らの祝電や会合あいさつなどが利用されてきました。元信者は、「高名な政治家の方まで支持しているのだから、お父様(文鮮明)の教えは間違いなく正しいんだと思った」と証言しています。

 岸田首相は「未来に向かって関係を断つ」と言いますが、一般紙からも「『これから』ばかりを強調し、『これまで』を真摯(しんし)に省みる姿勢に欠けるのでは、その本気度に疑問符がつきかねない」(「朝日」19日付社説)と指摘されるほどです。

 岸田首相と自民党は、志位委員長が代表質問(6日)で提起した5点―(1)自民党としての調査(2)政権としての調査(3)行政がゆがめられた疑惑の調査(4)安倍元首相の癒着の調査(5)半世紀に及ぶ歴史的癒着の調査―をただちに行うべきです。

癒着の中心・安倍氏調査を

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(写真)質問する宮本徹議員=18日、衆院予算委

 自民党と統一協会との関係は、選挙の場面でも深刻な癒着が明らかになっています。

 日本共産党の宮本徹議員は18日の衆院予算委で「8万票と言われる統一協会票が当落を左右するのが参院比例区だ」と述べ、16年に自民党の宮島喜文氏、22年には第1次安倍政権の首相秘書官を務めていた井上義行参院議員が同協会の組織的支援を受けていたと指摘しました。

 ところが、岸田首相は「選挙などを通じて各議員がどのようなかかわりを持ったか。これは議員それぞれ、さまざまだ」と述べるにとどまり、組織的な関係を否定。議員個々の問題に抑え込もうとしています。

 ただ、参院比例区は、個人名の得票が政党名の得票としてカウントされ、政党の議席に結びつくものです。統一協会票が自民党の比例得票となっていたことに対する、岸田首相の同総裁としての責任も厳しく問われる必要があります。

 元参院議長の伊達忠一氏は、北海道テレビ放送の番組(7月28日放映)で、16年の参院選に全国比例候補として出馬した自民党の宮島喜文氏をめぐり、安倍元首相に統一協会の組織票を回すよう依頼したと証言。今夏の参院選では、安倍氏から「今回は井上(義行)で」と拒否されたため、宮島氏は出馬を辞退したといいます。統一協会の元信者らからも、井上氏を応援するよう求められたとの証言が相次いでいます。

 山添議員は20日の参院予算委員会で、癒着の中心にいた安倍氏の調査を要求。しかし、岸田首相は「本人が亡くなったいま、十分な調査は難しい。調査を行うことが困難だ」と拒否。統一協会の組織票を差配した安倍氏の疑惑にふたをし続けようとしています。

 選挙をめぐる統一協会の組織票の差配については、自民党の点検対象外となっていた細田衆院議長も担っていた疑惑があります。

 細田氏は、同党のなかでもとくに統一協会との関係の深さが指摘されている清和政策研究会(安倍派)の元会長です。伊達氏は、テレビ番組の取材に対し、細田氏と統一協会の票について話したことがあると答えています。

 さらに、7月の参院選では安倍派に所属し、安倍氏との親交の深かった萩生田光一政調会長と、初当選した同党の生稲晃子参院議員が東京都八王子市の統一協会の関連施設を訪ねていました。生稲氏の事務所は、参院選を目的とした訪問だったことを事実上認めています。

 こうした自民党と統一協会との骨がらみの癒着の本丸に迫る解明がなければ、国民の信頼を取り戻すことは到底できません。

行政をゆがめた疑惑も

 憲法改正、家庭教育支援法の制定、同性婚合法化への慎重な対応、「日韓トンネル」推進、共産主義勢力の攻勢阻止…。統一協会のダミー団体「世界平和連合」が、国政選挙前に自民党国会議員らに署名を求めた推薦確認書に列挙されていた政策です。推薦確認書については「朝日」が報道。選挙支援の見返りに、統一協会側が掲げる政策への賛同を求めるもので、事実上の“政策協定”を交わしていたことが明らかになりました。

 統一協会の勅使河原秀行改革推進本部長は20日の記者会見で、推薦確認書への署名を求めたことについて「そういう説明を聞いたことがある」と認めました。自民党の斎藤洋明衆院議員(新潟3区)は確認書に署名したと明らかにしました。

 “政策協定”まで結び選挙支援を受けていた以上、党の政策に影響を与えたことはなかったのか―。外国に本拠を置く統一協会が、自民党を通じて日本の内政に干渉したという重大な問題です。岸田首相はきちんと問題に向き合うことが必要です。

 ところが岸田首相は20日の参院予算委で山添議員の追及に対し、「自民党の政策に影響があったということはなかったと思う」などと強弁しました。しかし自民党の点検では確認書の件は出てきていません。党としての調査もせずになぜ「影響はない」と言いきれるのでしょうか。

 実際、自民党は参院選の政策集で、改憲や家庭教育支援法の制定を盛り込んでいます。同性婚にも一貫して後ろ向きで、21年にはLGBTなど性的少数者に対する理解増進法案を先送りにしました。自民党が統一協会の政策と“共鳴”しあって動いてきたことは明らかです。

 しかも、政府・自民党が統一協会に便宜をはかり行政をゆがめた疑惑も深刻です。

 文部科学省の外局の文化庁宗務課は15年、安倍政権以前は認められなかった統一協会の名称変更を認める不可解な対応をしています。名称変更には当時の下村博文文科相の関与が指摘されていますが、経過に関わる記録の開示を政府は拒み続けたままです。

 宮本議員は18日の衆院予算委で、被害者が国と統一協会らを訴えた国家賠償請求訴訟の和解調書(14年)では、国が裁判長の提案をうけて適切な宗務行政を約束しながら、その後何の改善策もとってこなかったことを告発。改善策もとらず、和解調書の翌15年に名称変更を認めた経緯を明らかにするよう求めています。

 岸田首相は、野党の追及で、宗教法人の解散命令請求が認められる要件を刑法等に限定するとした答弁を一夜にして覆し、「民法の不法行為も該当する」と答弁しました。しかし、政府・自民党との癒着の実態をきちんと調査し、過去を清算することなしに、新たな被害を生まない未来への展望は開かれません。


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