しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年10月23日(日)

きょうの潮流

 岩手県北部の山村、一軒の煙突からゆっくりと煙が上がっていました。使い始めた薪(まき)ストーブの暖かさがこちらにも伝わってきました。山の恵みを利用してきた一戸(いちのへ)町の小繋(こつなぎ)は「小繋事件」の名で知られています▼先週、集落の入り口近くに、山の共同利用、管理を行う「入会権」を守るたたかいを刻んだ記念碑「小繋の灯」が建立されました。長年の慣行だった村民の入山を山林地主が所有名義を盾に禁止したのに対し、裁判を起こしたたたかいは、3世代にわたりました▼「この闘いは労働者、農民、知識人、文化人、学者、学生、そして指導と支援に半生をささげた方々によって支えられた」。碑文には小繋集落民、元町長と並んで岩手小つなぎの会世話人代表・早坂啓造さんの名が刻まれています▼小つなぎの会は2017年、事件100周年の年に碑の建立を決めましたが、岩手大学名誉教授の早坂さんは完成を見ずに2年前に亡くなりました。専門は経済学で、『資本論』に関する著書も▼若きマルクスが独の州議会での木材窃盗取締法を批判し、晩年には共同体が未来社会のひな型になると展望していました。早坂さんはマルクスの洞察に励まされるように膨大なたたかいの資料の収集に力を入れ、デジカメに1万7800コマ収めました▼碑の建立式に集まった参加者からは、小繋事件の遺産を学び、入会権をとらえ直し、現代に生かそうと発言が続きました。自然環境保護、山村再生と結んで、そして未来につながる羅針盤として。


pageup