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2022年10月22日(土)

主張

「併合州」に戒厳令

無法重ねるロシア 許されない

 ロシアのプーチン政権は一方的に「併合」を宣言したウクライナ東部・南部4州で20日、戒厳令を発動しました。ロシア当局が強権を使って占領地の住民や経済力を戦争に動員します。ヘルソン州では住民5万~6万人を1週間で強制的に移住させることが明らかにされました。国連憲章違反の侵略に加え、国際人道法に反する暴挙です。

国際法に反する住民動員

 プーチン大統領が19日、戒厳令を敷く大統領令に署名し、安全保障会議で演説しました。4州の重要インフラの防衛、治安維持、軍事作戦に必要な物資の増産にロシア政府が責任を負い、各州行政機関のトップにこれらの措置に対応する権限を与えるといいます。

 ウクライナ侵略と占領地の一方的「併合」は、国連憲章が禁じた他国の独立と領土保全を侵す行為です。その上、占領地の住民に戦争協力を強いることは無法に無法を重ねるものです。

 国際法は戦争中でも交戦当事者に文民の保護を義務づけています。ジュネーブ第4条約(文民保護条約)は占領地の住民を占領国の軍隊や補助部隊で本人の意思に反して働かせることを禁じています。軍事行動に関わる労働の強制も禁止しています。戒厳令はこの規定を踏みにじっています。

 12日に国連総会の緊急特別会合で採択された決議は、加盟国の7割を超す143カ国の賛成で、ロシアによる4州「併合」宣言を無効とし、即時、無条件の撤回を求めました。プーチン政権が4州をロシア領だとして戒厳令を正当化することは通用しません。

 住民移住を発表したのは4州の一つであるヘルソン州の親ロシア派勢力の「知事」です。同州の中を流れるドニプロ川の西側から住民を東側に移住させ、ロシア軍の行動を支えると述べたことが伝えられています。

 ウクライナ軍が進撃している地域から住民を立ち退かせ、侵略・占領を続けることが目的であることは明らかです。

 文民保護条約は、戦時下での安全確保を理由にした住民移転であっても、強制を禁じています。移住先がロシアであれば、同条約で「理由のいかんを問わず」禁止されている他国への強制移住です。

 プーチン政権は戦況が劣勢になった9月以降、4州の「併合」を宣言し、核兵器使用の威嚇をさらに強めてきました。予備役を大量に招集し、国民の犠牲によって侵略戦争を続けようとしています。しかしロシア国内では反発が拡大し、軍への動員を忌避する国民が増えています。

侵略戦争を直ちにやめよ

 19日の演説の中でプーチン大統領は、動員した兵士全員に制服、武器、食料、医療を与え、給与を払うと改めて言わざるをえませんでした。予備役から招集した兵士の給与の支払いをめぐって問題が起きていることにも言及しました。侵略戦争の行き詰まりは軍の疲弊ぶりを大統領自身が認めざるをえないほどです。

 ロシア国民や占領地住民を戦争に駆り立てても、犠牲を増やすだけです。プーチン政権に残された道は、ウクライナ全土からの即時、無条件、完全撤退を求めた3月2日の国連総会決議を受け入れ、侵略戦争をただちにやめることしかありません。


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