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2022年10月21日(金)

主張

安保文書改定協議

平和と暮らし壊す危険な企て

 岸田文雄政権が年末に予定する「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定に向け、自民・公明両党の与党協議が始まりました。政府・与党内の議論では、相手国のミサイル発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有とともに、その裏付けとなる軍事費の増額幅が大きな焦点になっています。

軍事費の2倍化狙う

 3文書改定に向けて18日に始まった与党協議に先立ち、政府が設置した有識者会議も9月30日に初会合を開いています。

 同会合では、日本の「安全保障関連経費」の対国内総生産(GDP)比が明らかにされました。

 同経費は、米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の国防費の定義を参考にして試算されました。これには、防衛省所管の「防衛費」の他、海上保安庁や内閣衛星情報センターの予算、旧軍人などへの恩給費、国連平和維持活動(PKO)分担金などが含まれます。

 政府が同会合に提出した資料によると、2022年度当初予算の「防衛費」(約5・4兆円)は対GDP比0・96%なのに対し、「安全保障関連経費」は1・09%(約6・1兆円)になります。

 なぜ、こうした試算を公表したのか。岸田政権は6月に決めた経済財政運営方針(骨太方針)で、NATOが加盟国の国防費を対GDP比2%以上にするという目標を持っていることを踏まえ、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記しました。事実上、日本も5年以内に対GDP比2%以上を目指すというものです。

 一方で、NATOの国防費の定義は、日本の「防衛費」よりも広範囲です。政府がNATOの定義を参考に「安全保障関連経費」を試算したのは、厳しい財政状況の下、「防衛費」の増額幅を抑える思惑があると報じられています。

 しかし、対GDP比2%は、およそ11兆円に上ります。「安全保障関連経費」を採用するにしても5兆円近い増額が必要です。しかも、自民党内ではすでに同経費の採用に異論が相次いでいます。

 同党の萩生田光一政調会長は17日の衆院予算委員会で、「(NATO基準による)水増しでは駄目だ」とし、「GDP比2%に向けて予算を真水で増額し、必要な防衛力を整備していく」「むしろ2%では足りない」などと述べ、「防衛費」そのもので2%以上を達成するよう求めています。

 いずれにせよ増額幅は5兆~6兆円に膨れ上がることになり、“軍事費2倍化”という大軍拡の方針に何の変わりもありません。

 軍拡の財源をめぐっては、将来の返済財源を定めた「つなぎ国債」の発行や法人税、所得税の増税などが挙がっています。しかし、法人税増税には、財界がすでに反発しています。国民に負担が重くのしかかる危険は避けられません。

憲法の趣旨に反する

 岸田政権が狙う「敵基地攻撃能力」の保有はそもそも、「他国を攻撃する兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」としてきた政府見解に反するものです。

 違憲の「敵基地攻撃能力」保有や軍事費2倍化は、東アジアの軍事緊張を一層激しくし、平和を壊し、国民の暮らしを押しつぶすものです。こうしたたくらみを絶対に許してはなりません。


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