2022年10月20日(木)
きょうの潮流
人間に値する生活とは何か。人間とはどういうものなのか。朝日茂さんが起こした裁判は、それを明らかにするものとして「人間裁判」と呼ばれました▼重症結核患者だった朝日さん。生活保護を利用して岡山県早島町の国立療養所で暮らしていました。「生活保護基準のあまりの低さ、とうてい人間生活としては耐えられない低さ」は生存権を保障する憲法25条に違反すると提訴しました▼「『健康で文化的な』とは決してたんなる修飾ではなく、その概念にふさわしい内実を有するものでなければならない」。そう指摘し朝日さんの訴えを認める判決を、東京地裁の浅沼武裁判長は62年前の10月19日に出しました▼浅沼判決は「健康で文化的な生活水準」について3点指摘します。国内で暮らす最低所得層の生活水準ではない。その時々の国の予算配分によって左右されず、それを指導支配すべきものである。すべての国民にあまねく保障されなければならない―▼朝日さんの怒りの火をともし続けようと、朝日訴訟の会が活動しています。岡山市内で朝日さんの遺品や訴訟関係の資料を展示した資料室も運営。一人ひとりが語り部となり、社会保障拡充の運動の輪を広げようと呼びかけます▼これに応え朝日さんの遺志を継ぐようにして、全国の生活保護利用者が、保護費削減は違憲、違法だとして国などを相手に提訴。くしくも19日に横浜地裁が原告勝訴の判決を出しました。朝日さんは励まし続けます。「権利はたたかう者の手にある」と。








