2022年10月15日(土)
きょうの潮流
反対の声が大きく広がるもとで強行された安倍晋三元首相の「国葬」。「弔意」を強制し、憲法が保障する思想・良心の自由を侵害する政府の行為はもう一つの「強制」を思い出させます。教育現場における「日の丸・君が代」の強制です▼国旗・国歌に対する態度はそれぞれの考えにもとづいて自由に判断するべきなのに、教職員には卒業式・入学式などで起立・斉唱することが強要されています。東京都では起立・斉唱の職務命令に従わなかったなどとして約20年間にのべ約500人が処分されました▼先日、この問題をめぐって強制に反対する市民らが文部科学省と交渉しました。ILO(国際労働機関)とユネスコ(国連教育科学文化機関)が日本政府に出した勧告を実施することを求めたものです▼ILOとユネスコの勧告は「起立や斉唱を静かに拒否することは…教員の権利に含まれる」とした上で、卒業式などの「式典に関する規則」について教員団体と対話する機会を設けることを求めています。「国旗掲揚・国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるような」合意をつくることが目的です▼しかし、日本政府は勧告を事実上、無視したままです。市民らとの交渉でも文科省は終始、消極的な姿勢だったといいます▼教職員の思想・良心の自由が奪われた学校で、子どもたちが本当の意味で憲法や自由について学べるのか。政府は国際的にも問題が指摘されていることを真摯(しんし)に受け止めて、直ちに勧告に沿った対応をするべきです。








