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2022年10月10日(月)

徹底追及 統一協会

富山 首長の選挙支援

“関係断つと言えない”と知事

 有権者における自民党員の割合は全国一とされる富山県でも、反社会的カルト集団の統一協会が政界へ根深く侵食しています。富山県、富山市で選挙支援までうける実態を見ました。(山本健二)


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(写真)新田知事(正面前列左端)を追及する、ひづめ県議(右端)=9月16日、富山県議会

 県知事と県都の市長がそれぞれ、新人で当選した直近の首長選挙で統一協会の選挙支援を受けていたことが、今年7月以降の知事や富山市長の記者会見、地元報道で明るみに出てきました。協会が富山政界に侵食している特徴の一つです。

 新田八朗知事は、無所属新人で出馬した一昨年の知事選で自民、公明、国民推薦の現職に6万票以上の差で勝利。投票依頼の電話かけ、後援会の名簿集めなどで協会関連団体の協力を得ていました。

 新田知事も候補者として、団体関係者の前で選挙演説。当初、演説の回数を3回だと公表していましたが、10月3日の知事会見で4回だったと改めました。

 元県議で自民、公明、立民、国民の推薦を受け昨年の富山市長選に勝利した藤井裕久市長。維新の地元幹部の新人候補らを破った裏で、後援会の勧誘活動など協会の支援を受けていたことを公表しました。

異例の言動

 統一協会との関係が明らかになった全国の首長の中でも、新田知事の言動は異例です。

 7月20日の定例会見で、新田知事は協会関係者の集会に招かれ演説するなどの選挙支援を受けた件を「ありがたいこと」と発言。これに全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が「強い衝撃」を受けたとして9月6日、全国の知事の中で新田知事のみに協会と関連団体との関係の説明などを申し入れる事態となりました。

 新田知事は、9月12日の県議会で、県内にも信者がいることなどを理由に「知事としては『関係を断つ』という発言はできない」などと回答する及び腰でした。

共産党追及

 16日の県議会一般質問で日本共産党県議団(ひづめ弘子、津本ふみおの2氏)の、ひづめ県議が新田知事をただしました。全国弁連の申し入れの受け止めを聞かれた知事は「見解が違う」と回答。統一協会との関係についても「コンプライアンス上、問題のある団体とは付き合わない」と繰り返し、断絶を明言しないままです。

 「問われているのは、宗教に名を借りた反社会的団体にどういう態度を取るかだ」と新田知事を追及した、ひづめ県議。質問直後に富山市で開かれた県、富山市両革新懇主催の学習会(9月18日)では「知事と統一協会の間の金銭、人脈のつながりの有無も含めて断固解明に取り組む」と決意を語りました。

自民議員が催しで講師

活動に「お墨付き」

 統一協会関連団体によるイベントへの後援や議員が参加していた問題でも、富山県や富山市では、ひときわ深刻な実態が浮かび上がっています。

 富山県と富山市は、自転車イベント「ピースロード」や日韓トンネル推進富山県民会議主催の講演会を後援。富山市教育委員会も、富山県平和大使協議会主催の「家庭教育講演会」や自民党の国会議員、県議、市議らを講師に招く公開講座「オープンカレッジ」を後援し、統一協会にお墨付きを与えました。

平和大使に任命

 昨年5月30日、市教委の後援で開かれた第58回「オープンカレッジ」は、協会と富山県内の政治家の蜜月ぶりを表す象徴的なイベントと言えます。

 当行事では、統一協会開祖の文鮮明(故人)・韓鶴子夫妻が創設した天宙平和連合(UPF)の日本支部「UPFジャパン」議長で国際勝共連合会長の梶栗正義氏が講演。教団から選挙支援を受け、当選直後の藤井市長はこの場に来賓で招かれ、平和大使に任命されました。(現在は辞退)

 藤井市長とともに、自民党の田畑裕明衆院議員も来賓で出席。同党の宮腰光寛衆院議員(当時)、堂故茂(どうこ・しげる)参院議員が祝電を送りました。主催者あいさつに立った稗苗清吉(ひえなえ・せいきち)県平和大使協議会議長は、当選6回で議長経験もある自民党県議です。

 市長、国会議員、県議、市議と協会関係者が一堂に会した記念写真は平和大使協議会のホームページに掲載されました。(現在は削除)

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(写真)藤井富山市長らが来賓で出席した2021年5月30日の「オープンカレッジ」の写真=平和大使協議会のホームページから(現在は削除)

 今年6月、県平和大使協議会の申請を受け藤井市長が行った「出前トーク」も、市が後援していたものです。

 県議、富山市議にも根深く統一協会が食い込んでいます。

 今年7月、地元民放局チューリップテレビの取材に、少なくとも4人の県議が選挙支援を受けたことがあると回答しました。そのうち2人の自民県議が同局のインタビューで証言。前述の稗苗氏と、2013年10月の「オープンカレッジ」で講師を務めた中川忠昭県議です。

 同局の取材では、今年1月に自民党から分裂した富山市議会の最大会派「富山市議会自由民主党」の3市議も統一協会の選挙支援を受けたと証言。田辺裕三市議はインタビューで新田知事同様、選挙支援を「ありがたいこと」と答えていました。

 高田重信市議と成田光雄副議長は19年6月と、分裂後の今年1月に会派の勉強会と称して統一協会と表裏一体の反共謀略団体「国際勝共連合」幹部の青津和代氏を講師に招いた「共通点」があります。テーマはいずれも、統一協会と自民党が全国的に推進する「家庭教育支援条例」や同性婚・LGBT反対の内容です。

「関係断絶」訴え

 富山県内で統一協会と首長、自民党議員らとの癒着や政治利用が進行するなか「統一協会と関係を断て」と訴え、政治を動かしているのが日本共産党です。

 7月27日には党県議団と党県委員会、党富山市議団(赤星ゆかり、吉田修の2氏)と党富山地区委員会がそれぞれ県と市に申し入れ。新田知事、藤井市長らに関係を断つよう要請しました。

 富山市議団は、統一協会系行事の後援を過去にさかのぼって取り消すことを市に約束させました。「考えていない」と回答していた市の態度を転換させたものです。(9月16日付既報

 9月15日の市議会一般質問に立った赤星市議は、後援申請で市に提出した平和大使協議会規約を引用し「少し調べたら統一協会にたどりつくはず」と追及。市当局は過去の承認の取り消しを「現在検討している」と答弁しました。

 統一協会と首長、自民党議員らの関係を批判する市民の声と共産党の取り組みが結びつき、市を転換させました。


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