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2022年10月9日(日)

徹底追及 統一協会

安倍元首相と深いきずな

開祖供養行事で新たな祈り指示

 統一協会(世界平和統一家庭連合)と安倍晋三元首相の関係について、岸田文雄首相は調査を拒否しています。ただ安倍氏との“きずな”は、統一協会内で周知の事実でした。信者らが見聞きした癒着の実態とは―。(統一協会取材班)


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(写真)統一協会は文鮮明を供養する特別の期間中に、亡くなった安倍元首相にも祈りをささげるよう信者に指示しました

 安倍氏が銃撃されたのは7月8日。当時、統一協会は開祖、文鮮明の没後10周年の特別な供養期間中でした。事件の15日後、特別供養に新たな祈りを加えるよう信者に指示を出しました。

 「食口(シック=信者のこと)が安倍元首相のご冥福と日本が一つになることを祈る」と。

 子どものころから両親に信仰を強要されてきた元2世信者は、「政治家の冥福を祈るという指示は初めてみました」と驚きます。

担当者に注意

 安倍氏と統一協会の関係はいつ頃から深まったのか―。

 安倍氏は官房長官だった2006年5月下旬、集団結婚式を兼ねて開かれた「天宙平和連合(UPF)祖国郷土還元日本大会」に祝電を送りました。UPFは統一協会の開祖文鮮明の妻韓鶴子が総裁のダミー団体です。安倍氏は「岸信介元総理大臣のお孫さん」と紹介されました。

 ただ当時の安倍氏は、現在ほど統一協会と密接な関係があるとはみられていませんでした。実際、祝電を送ったことについて安倍氏は「誤解を招きかねない対応であるので、(事務所の)担当者によく注意した」とのコメントを出しています。祝電はまずかった、というのです。

 ところが安倍氏は昨年9月に、同じUPFが韓国で開いた大会にビデオメッセージを送ります。ここで安倍氏は「演説の機会をいただいたことを光栄に思います」と述べ、こんな発言をしました。

 「今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

返り咲く前に

 かつては秘書を注意したのに、一転して自ら韓鶴子総裁を大絶賛したのです。

 この変化の裏に何があったのか―。

 安倍氏は06年9月に初めて首相に就任したものの、わずか366日で退陣に。09年には自民党が政権から滑り落ちました。再び安倍氏が首相についたのは12年12月です。

 統一協会関係者は言います。「国際勝共連合の梶栗正義会長が、安倍氏が首相に返り咲く前に接点をもっていた。うまく協会とつないだのだろう」。勝共連合とは統一協会の政治組織です。

 ジャーナリストの鈴木エイト氏が入手し、全国霊感商法対策弁護士連絡会に提供した資料によると、梶栗氏は昨年10月に統一協会の日曜礼拝でこんな裏話を披露していました。

 ―安倍氏以外の首相経験者3人にアプローチしたが「布教のために利用したいだけでしょ」と断られた。安倍氏との信頼関係は一朝一夕でできたわけではない。

 権力の座からすべり落ちていた安倍氏に対して、政権復帰前から接触してきたことが功を奏した形です。

安倍氏側近の選挙応援 “志を共にしている政治家”

本部のメッセージ 本紙入手

 昨年9月、UPFの大会で、安倍氏のビデオメッセージを見た信者たちはどんな反応をしたのか―。

 統一協会の日曜礼拝で梶栗氏は、こんな自慢話をしています。

 ―信者や教会長が「うわーこれどうなっているんですか」「何が起こっているんだ」「すごいことだ」と大騒ぎになった。

“親密さ”強調

 さらに梶栗氏はビデオメッセージが、「日本の再建のために信頼して一緒にできる団体はどこか」と安倍氏が統一協会に信頼を寄せる内容だったと説明。信者に統一協会と安倍氏の“親密さ”を強調してみせました。

 事あるごとに安倍氏との近い関係をひけらかす統一協会。内部で信者は安倍氏をどう見ていたのか―。

 信者の両親を持つ元2世信者は、「信者だったときは安倍元首相を『統一協会を応援する人』『善なる人』ととらえていました。安倍氏の祖父である岸信介元首相、父親の安倍晋太郎元外相についても協会で教わりました」と証言します。

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(写真)7月の参院選で自民党の井上義行議員を応援するよう信者に求めた統一協会のメッセージ

 統一協会は安倍氏側近をも選挙で支援しました。今年7月の参院選で自民党比例候補だった井上義行議員です。井上氏は、第1次安倍政権で首相秘書官を務めました。派閥は安倍派です。一部報道では安倍氏側が統一協会に井上氏の支援を依頼したとされています。

 本紙は統一協会本部が井上氏の応援を求めて信者たちに送ったメッセージを入手しました。

 メッセージでは統一協会の理想世界を実現する「重要な取り組みとして、私たちと志を共にしている政治家の井上よしゆき先生を応援しています」と強調しています。

 そして井上氏が安倍氏の首相秘書官だったことを紹介し、「井上先生をぜひ共に応援していただきたい」と要請。協会ダミー団体「世界平和連合」が主催する井上氏と青年代表とのトークセッションに参加するよう求めています。

役職者が指示

 実際、統一協会元信者らからは、井上氏を応援するよう求められたという証言が相次いでいます。ある信者は井上氏を応援するよう協会の役職者から指示をうけたといいます。元2世信者は「信者の母親から電話で井上氏への支援を求められた」と語ります。

 統一協会は安倍氏を最大の「広告塔」として使い、安倍氏側は統一協会を選挙の手足に使った―そんな癒着の実態が浮かび上がります。

 安倍事務所に、安倍氏側が統一協会に井上氏の支援を要請したか質問しましたが、回答はありませんでした。


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