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2022年10月6日(木)

米兵を相手に…国が「性産業」助長

「基地村」女性が訴え 韓国政府に賠償命令

1970年代「ドル稼ぐ妖精」と

 在韓米軍基地周辺のいわゆる「基地村」で1950年代から米兵を相手に「性産業」で働いていた女性たちが、韓国政府を相手に売買春を助長したなどとして損害賠償を求めた裁判で、同国最高裁は政府の責任を一部認め、原告への賠償を命じました。原告側は歓迎するも、「きょうの判決は終わりではなく新たな始まりだ」とする声明を発表。政府の公式謝罪と真相究明、支援に関する法制化などを求めました。

 最高裁は9月29日、「過去の権威主義政府の下で国が基地村をつくり、管理・運営し、売買春を助長した行為は違法だ」と断罪。「原告は、こうした違法行為により人格や人間の尊厳性を侵害され、精神的被害を受けた」と強調し、原告98人に1人当たり300万~700万ウォン(約30万~70万円)の支払いを命じました。

 朝鮮戦争(1950~53年)以降、米軍は主要都市に部隊を配備。周辺にナイトクラブや「性産業」で働く女性が集まり、基地村ができました。

 70年代には当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権が、米軍の求めに応じて女性たちに性病検査を行うなど性売買に関与。性病だとされた人を隔離施設に移送し、治療しました。政府は女性たちを「ドルを稼ぐ妖精」「真の愛国者」などとたたえ、性売買を促したといいます。

 122人の女性が2014年、身体的・精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料として、1人当たり1000万ウォンを求めて政府を提訴。1審では、性病感染者を強制的に隔離収容したことの違法性だけが認められ、57人に500万ウォンを支払うよう命じた判決が出されました。一方、基地村の設置や管理については違法ではないと判断されました。

 2審は、当時の文書や政府が慰安婦登録制度を設けていたことなどから、国が積極的に関与し、助長したことも認めました。原告、被告ともに上告。最高裁では双方とも棄却され、2審の判決が確定しました。

 被害者の多くは70~80代です。裁判中に24人が亡くなりました。判決後、会見した被害者のキム・スクジャさんは「判決に涙がでます。亡くなった仲間も結果を喜んでくれるはず」と語りました。(栗原千鶴)


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