2022年10月6日(木)
きょうの潮流
久しぶりに劇場に足を運びました。劇団俳優座「待ちぼうけの町」と劇団民藝「忘れてもろうてよかとです―佐世保・Aサインバーの夜」の2公演です▼前者は宮城県三陸沿岸の町にある食堂が舞台。東日本大震災で子どもを亡くし、行方不明の夫を待ち続ける女性店主と、店に集う漁師や復興作業員たちの人生が交差します。喪失の悲しみと過去への郷愁。互いの痛みを思いやり、食を共にするささやかな喜びが命を明日へつなぎます▼後者は基地の町・佐世保で米兵相手のバーを営む高齢女性が主人公です。敗戦直後から朝鮮戦争、ベトナム戦争と、米兵であふれかえる町で生き抜いてきた女たちの戦後史。今は客も来ない店で彼女の独り言が続きます▼「いまの若か日本人なアメリカと戦争したとば知らんちゅうとでしょ。(略)よか。忘れてもろてよか。うちらも忘れることにしとります…忘れてしまうことに。神様が貧乏人にいっちょだけくれらした才能ですたい。忘れる、いう才能。どげん思うですか?」▼劇場という同じ空間に身を置き、役者の肉声で発せられる問いかけは、真っすぐに投げられたボールのように胸に届きます。問いを周囲の観客と共有していると実感できるのも、演劇の魅力でしょう▼そして、前者で町のみんなに見守られ伸び伸びと生きる知的障害者を演じた岩崎加根子さんが89歳、後者の主演の日色ともゑさんが81歳と知り、その声量と力量、りんとした姿に、女の後半生に立ち向かう力と希望が湧いてくるのでした。









