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2022年10月5日(水)

コロナクラスター 小規模病院を直撃

補助減り窮地

国は実態に合った支援強化こそ

北海道函館

 新型コロナウイルスが感染拡大の波を繰り返して2年半。小規模病院はクラスター(感染者集団)の発生でより深刻な経営危機に直面しています。


写真

(写真)診療する佐々木医師(本人提供)

 北海道函館市にある函館稜北病院(104床、道南勤労者医療協会)では、第5波の昨年8~9月と今年6月にクラスター(1カ所で5人以上)が発生。今年7~8月も4人の陽性者が出ました。

 同病院は一般病棟と回復期リハビリ病棟の2病棟があります。建物の構造上、隔離病床をつくることが難しく、コロナ専用病床はありません。この間、コロナ専用病床を持つ病院と連携し、発熱外来を開設して積極的にコロナ患者の診療に努めてきました。

 理事長の佐々木悟医師は「院内で陽性患者が出たときは、病棟全体をゾーニング(清潔区域と汚染区域を分ける)して入退院を中止する対応をしてきた」と話します。

入退院を中止

 昨年8月の場合、3階の一般病床で患者と職員計7人が陽性に。重症者と肺炎を起こした中等症の患者を転院させ、保健所の指導で2階の回復期リハビリ病床も含め全館で入退院を中止しました。

 「この時は入院中止の減収約2200万円を、年度末の国の補助金(感染症病床確保促進事業費補助金)でほぼ補てんできた」といいます。

 6波では回復期病床で、今年5月19日の陽性者確認から6月4日の終息までに患者と職員計28人の陽性が確認されました。

 大きなクラスターでしたが、保健所は昨年と異なり当該病棟だけの入退院中止を指示。佐々木さんは「一般病棟の入退院は許可されていたが、次々とクラスターが広がるなか実質的に入退院を制限せざるを得なかった」と話します。

 その結果、5~6月の減収約1720万円に対し、国からの補助金は1フロアだけが対象の約140万円(見込み)という厳しい状況です。補助対象の回復期病床が低く算定される仕組みの問題もあるといいます。

60%台に落ち

 続いて7月末には一般病床の患者の感染を確認。8月9日の終息までに陽性者は患者、職員の計4人に抑えることができました。しかし、入退院の制限を余儀なくされ、一般病床の稼働は60%台に落ち込みました。

 「私たちのような小病院は病床の稼働が90%以上、100%近くでないと経営は成り立たない」と佐々木さん。「8月の減収は1340万円にも上りました。しかし、今回はクラスターではないため補助金の支給はありません」

 佐々木さんは「小規模病院の経営はもともと厳しいところに、コロナによってさらに危機的な状況に陥っています。職員の感染者も次々に出る困難な条件のもとで、力を合わせて懸命に診療にとりくんできました。国には現場の実態に即して補助金を見直し、拡充してほしい」と力を込めます。


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