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2022年10月5日(水)

英、富裕層減税を撤回

労組スト・市民抗議広がり

 【グラナダ(スペイン南部)=桑野白馬】英国で、物価高騰に見合う賃上げやエネルギー価格の引き下げを求める労働者のストや市民の抗議行動が相次ぐなか、政府は3日、富裕層向けの減税策を撤回しました。1日に全国で大規模な行動を組織した共闘組織「もうたくさんだ」はツイッターで、一斉行動が「富裕層への減税を撤回させた」と述べました。


 トラス保守党政権は9月23日、所得税の最高税率を45%から40%に引き下げることを柱とする減税措置を表明。国民生活が苦境にある中での年収15万ユーロ(約2400万円)超が対象となる富裕層減税に、国民の不満が噴出していました。クワーテング財務相は3日の声明で、「45%(税率)の廃止が混乱のもととなったことは明らかだ」と述べ、「廃止には着手しない」と発表しました。

 発表からわずか10日での「屈辱的な撤退」(ガーディアン紙)を招いたのは、全国での国民の抵抗でした。1日には全国で鉄道、郵便の労働者がストを実施。同時に、共闘組織「もうたくさんだ」の呼びかけで、国内50カ所で10万人以上が街頭に繰り出し抗議しました。中部バーミンガムで始まった保守党大会の会場前でも2日、数千人が抗議集会を開催しました。

 トラス政権は富裕層減税を撤回しましたが、銀行員のボーナス上限廃止や、大幅な公共サービスや福祉給付の削減の方針に変化はありません。共闘組織「もうたくさんだ」は、インフレに見合う賃上げの実現や、主要なサービスのスト禁止方針の撤回まで「決してあきらめない」と表明しました。

 コロナ禍で進めた賃金補償など給付増で財政赤字が増大していた中、トラス政権が無謀な減税を発表したことで、通貨ポンドや英国債が急落し、英政府への「財政的な信頼」が失墜。保守党内からも富裕層減税への反対論が相次いでいました。

 ジョンソン政権で有力閣僚を務めたマイケル・ゴーブ下院議員は2日、議会採決での不賛成を示唆。エスター・マクベイ元雇用・年金相は、「人々が仕事に戻れるようにするのが私たちの仕事だ」と強調し、インフレ率に応じた生活支援金の引き上げをしないのは「大きな過ちだ」と指摘しました。


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