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2022年9月29日(木)

“国葬”―異様な安倍礼賛 「継承」許さぬたたかいを

政治部長 中祖寅一

 岸田内閣は27日、安倍晋三元首相の「国葬」を強行しました。

 「国葬」で岸田文雄首相は何を語ったのか―。岸田首相は、安倍氏への弔辞で「歴史は、(在位の)長さよりも事績によってあなたを記憶する」と述べ、「あなたが敷いた土台の上に、持続的で、すべての人が輝く包摂的な日本を、地域を、世界をつくっていく」と「誓い」を立て、「日本と世界の行く末を示す羅針盤」とまで安倍氏を持ち上げました。安倍氏がピアノ演奏する姿を基調とし、その足跡と政治的成果を総まくりする8分間のビデオ映像も流されました。

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 「国葬」は「故人に対する弔意と敬意を国全体としてあらわす儀式」(岸田首相)と位置付けられてきましたが、安倍氏の葬送というより、安倍政治の礼賛とその継承の誓いを「国全体として」確認する場とされました。

 岸田氏があげた安倍氏の「事績」とは、改憲手続法の制定、防衛庁の「省」昇格、教育基本法の改定、平和安全法制(安保法制)・秘密保護法の制定、日米同盟の強化など「戦後レジームからの脱却」の推進であり、2度にわたる消費税増税など財界奉仕の政策の実行でした。

 これらの「事績」は、国会での多数を頼みにした民意不在の改憲の動き、明文改憲が困難と見るや解釈・立法で憲法を壊す立憲主義破壊、国民生活破壊の消費税増税など、どれも激しい国民の抵抗と抗議を呼び起こしたものばかりです。その礼賛=「敬意」を「国全体として」共有するとして、一方的に国民に押し付けるのは、憲法19条の思想・良心の自由を侵害するものです。

 「国葬」では、政府が「弔意の表明を求めない」などとされました。現実には、衆参両院や最高裁、各省庁や多くの地方自治体で半旗掲揚が行われました。大規模な政治、社会の動きは、個人に弔意を強制する事実上の大きな力として働きました。

 「国葬」は安倍礼賛=「敬意」と弔意を個人に強制し、思想・良心の自由を侵害する違憲の行事となりました。

 また、なぜ安倍首相だけを特別扱いするのかという憲法の平等原則違反の問題も、最後まで合理的理由は説明されませんでした。「国葬」は二重、三重の違憲という深刻な問題を残しました。

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 27日には、国会前をはじめ、全国各地で「国葬」強行に抗議する集会やデモが取り組まれました。その怒りの根底には、憲法を壊し、民主主義を壊し、国民生活を壊してきた安倍政治への巨大な怒りがあります。岸田首相が安倍氏の「死」を政治利用し、「安倍政治の継承」を掲げる自らの政治基盤を強めようという狙いは多くの国民に見抜かれています。

 岸田首相が進める「敵基地攻撃能力の保有」と新たな解釈改憲、「軍事費2倍化」の動きも、安倍氏が強く唱道してきたものです。「国葬」強行に対して広がったたたかいは、こうした岸田政権の危険な政治を阻み、安倍政治を終わらせるたたかいへと大きく発展していこうとしています。


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