2022年9月28日(水)
イタリア総選挙 極右政党 不満受け皿に
起源はネオファシスト政党
25日投票のイタリア総選挙では、極右「イタリアの同胞」(FDI)などの右派連合が下院(400議席)で235議席、上院(200議席)で112議席といずれも過半数を獲得しました。これに対し、民主党などの中道左派連合は下院で80議席にとどまり、前回選挙で第1党だった「五つ星運動」も51議席と激減させました。
右派が大差つける
イタリアの上下両院選挙は、議席の3分の1を当選者が1人の小選挙区制、残りを比例代表制で選出する制度。第1党が有利になるため、下院ではそれぞれ得票率では右派連合43・8%、中道左派連合26・1%でしたが、小選挙区で、右派121議席、中道左派13議席と大きな差がつきました。
FDIは約26%の得票で第1党となりました。13年の選挙では約2%、18年に4・4%の得票率にとどまっていました。今回、第1党に躍り出た要因は、前回の18年選挙以来、さまざまな組み合わせの政権ができたなかで、唯一野党にとどまったことで、国民の不満の受け皿となったことがあります。
特に21年2月に発足したドラギ政権は、民主党、五つ星運動、同盟、フォルツァ・イタリアなどすべてが参加する「挙国一致」内閣で、経済閣僚に金融専門家を任命しました。
同政権は、欧州連合の新型コロナ復興基金からの交付を受けるための国内改革を推進。しかし新型コロナ禍につづく、ウクライナ戦争後の物価高騰で国民の生活苦が増す中で、「イタリアの国益を守る」などと右派民族主義的主張を強めたFDIへの支持が高まる結果となりました。中道右派の大物政治家のFDIへのくら替えも相次ぎました。
ファシズム脱却?
イタリア初の女性首相就任が確実視されるFDIのメローニ党首は、大幅減税や保育料の無料化などを訴える一方、不法移民の厳格な取り締まり、「伝統的な家族」の価値尊重を唱え、LGBTQ(性的少数者)の権利などに批判的な立場をとっています。
FDIは、戦後ムソリーニの支持者がつくったネオファシスト政党「イタリア社会運動」が母体です。その後身「国民同盟」が2009年に中道右派政党「フォルツァ・イタリア」と合併し「自由国民」(党首・ベルルスコーニ首相)を創設。12年にベルルスコーニ氏のスキャンダルで党が分裂し、現メローニ党首らがFDIを結成しました。
「イタリア社会運動」に15歳で参加したメローニ氏は、ファシストに共鳴した過去について、FDIとしてファシズムと決別したと主張。ただ、それに懐疑的な見方も根強くあります。
選挙の投票率は、前回から9ポイント減の63・9%で、国民の政治不信の根深さを示しています。(伊藤寿庸)








