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2022年9月28日(水)

主張

抗議の中の国葬

強行した岸田首相の責任重大

 岸田文雄政権が27日、安倍晋三元首相の国葬を実施しました。首相の独断で国葬開催を発表してから2カ月半、広がり続ける国民の批判や疑問の声に首相はこたえようとしませんでした。法的な根拠のない憲法違反の儀式を強行したことは重大です。国葬に抗議する集会やデモ、宣伝行動は全国各地で取り組まれました。民意に逆らう政治をこれ以上続けさせることはできません。

「安倍政治の賛美」一色

 国葬では葬儀委員長を務めた岸田首相らから、安保法制=戦争法をはじめ違憲の法律を成立させた安倍氏の実績をたたえる追悼の言葉が相次ぎました。

 首相は、安保法制や秘密保護法の成立で「国の安全はより一層保たれるようになった」と語り、多くの国民の反対を押し切り、「戦争する国」づくりを進めた安倍氏を平和に尽力した政治家と描きました。また、安倍氏が「戦後レジームからの脱却」を掲げ、防衛庁を防衛省へ格上げしたことや、改憲のための国民投票法を成立させたことなどについて「今日につらなる礎」と述べ、安倍氏の「敷いた土台の上」に自らの政治を推進することを誓いました。友人代表の菅義偉前首相も安保法制などに加え、内心の自由を侵す共謀罪法を成立させたことを挙げて、「日本にとっての真のリーダーだった」などと高く評価しました。

 多くの国民から批判が相次いでいる憲法をないがしろにした政治、格差と貧困を広げた「アベノミクス」失政、「森友・加計・桜を見る会」など国政私物化疑惑は全てかき消されました。安倍氏が統一協会と深く癒着し、「広告塔」としての役割を果たしたことは一切問われませんでした。

 岸田氏らの安倍氏賛美の言葉はNHKをはじめほとんどのテレビ局の中継を通じ、全国に流されました。国葬の開催そのものが、安倍政権の8年8カ月を美化する一方的な評価を国民に押し付ける場になったことは明らかです。

 中央省庁では半旗が掲げられ、黙とうも呼びかけられました。内心の自由を侵害する大きな問題です。国民の中で評価が大きく分かれている安倍氏の政治的立場や政治姿勢を、国家として全面的に公認し、「安倍政治」を賛美・礼賛する国葬の危険性を改めて浮き彫りにしています。

 国民の不信や疑念は払しょくされていません。国葬開催が近づくほど反対の世論は増加しました。「産経」・FNNの調査では、7月は国葬決定「よかった」50・1%、「よくなかった」46・9%でしたが、8月には「賛成」40・8%、「反対」51・1%と賛否は逆転し、9月調査では「反対」62・3%、「賛成」31・5%と差は広がりました。国葬についての岸田首相の説明に「納得できない」は72・6%にのぼっています。

説明できないままの首相

 岸田首相は22日、訪米時の記者会見で「最後まで丁寧な説明を続ける」と言いましたが、その後、説明することなく国葬を強行しました。あまりに無責任です。

 特定の政治家の死を特別扱いする国葬は民主主義とは両立しない儀式です。自らの政権浮揚の思惑から国葬を行うことは、死者の政治利用でもあります。道理のない国葬で国民の分断を招いた岸田政権の姿勢が厳しく問われます。


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