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2022年9月26日(月)

主張

「安全な中絶」の日

女性の自己決定権の保障こそ

 9月28日は「国際セーフ・アボーション・デー(安全な妊娠中絶のための権利の日)」です。1990年のこの日、中南米の女性ネットワークが、ブラジルでの奴隷制度廃止の記念日にあわせて、中絶合法化のための行動を開始しました。2011年からは国際行動デーとなり、今年も世界各地で行動が予定されています。

日本の立ち遅れ打開急務

 妊娠・出産は女性の人生にとって大きな出来事です。妊娠期間は約40週におよびます。吐き気、眠気、疲れやすいという症状や、わけもなくいらいらして精神的に不安定になることもあります。血液量も増え、心臓の負担は大きくなります。母体の心肺機能が徐々に鍛えられ、妊娠後期には約3キロの胎児に血液を供給できる体になっています。精神的ストレスをできるだけためず、平常時よりも十分な休息をとることが必要です。

 出産後の産褥(さんじょく)期は人によっては妊娠中以上に体調がすぐれない場合もあります。涙もろくなったり、これからの子育てに不安を感じて気分がふさいだりするマタニティーブルーズを経験します。

 女性は、妊娠・出産によって1年の間に心身が大きく変化します。そのためキャリア(経歴)の中断や、働き方をゆるやかにすることを検討する人もいます。女性自身が、子どもをいつ何人産むのか自己決定することが欠かせません。

 しかし、日本ではこの権利の保障が大きく遅れています。たとえば、中絶は母体保護法によって配偶者同意が必要です。こうした国は世界で11カ国・地域だけです。

 中絶方法も、世界では80カ国以上で経口中絶薬が使用されていますが、日本は未承認で、女性の心身に負担の大きい掻爬(そうは)法が主流です。世界保健機関(WHO)は「妊娠初期の9週までは中絶薬を、12週から14週までは真空吸引法または中絶薬を推奨」しています。

 中絶薬であるミフェプリストンとミソプロストールは、効果も安全性も高い医薬品として、医師だけでなく助産師や保健師が処方する国もあります。日本でもようやく年内に薬事承認される見通しですが、費用や処方(販売)方法などがどうなるか注視されています。現状、中絶手術には10万~20万円かかります。これと同水準では必要な人が利用できません。

 性交後72時間以内に服用が必要な緊急避妊薬(アフターピル)は約90カ国で処方箋なしで薬局入手ができます。日本は医師の診察・処方箋がないと入手できず、間に合わない事態が起きています。

 予期せぬ妊娠を防ぎ、互いの性を尊重する人間関係を築くため包括的性教育の実施も必要です。

堕胎罪の廃止を求めて

 中絶に「悪の烙印(らくいん)」を押している刑法の堕胎罪の廃止も急務です。日本共産党の山添拓議員が3月の国会で堕胎罪廃止を求めた質問の動画は、参院選中に10~20代が多く利用するSNSで拡散され、200万回以上再生されるなど大反響でした。女性の権利を一切認めない明治時代につくられた堕胎罪は、日本国憲法が保障する個人の尊厳と相いれません。

 女性差別撤廃条約は16条で女性の出産の自己決定権を定め、2条で女性差別的な刑法の廃止を求めています。権利としての安全な中絶の早急な整備は世界の流れと合致するものです。


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