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2022年9月25日(日)

出口見えぬ酪農・畜産危機

北海道釧路で農協決起大会 生産資材が暴騰

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(写真)「危機を突破しよう」と唱和する人たち=18日、北海道釧路市

 「売れるかどうかと思いながらヌレ子(生後約2週間の雄子牛)を出荷した。売れたものの3千円。これではミルク代にもならない」「ジャージー種の子牛を競りに出し、2回とも売れず、獣医に殺処分してもらった」「(妊娠して出産予定の)初妊牛を出荷したが、30万円にしかならない。コストは40万円なのに」―。乳牛の販売価格急落が、飼料など生産資材の価格高騰で深刻な経営悪化に陥っている北海道の酪農家に追い打ちをかけています。(日本共産党北海道委員会農漁民部副部長 野呂光夫)


 コロナ禍で乳製品需要が激減し、在庫増大で生産抑制、極端な円安、地球温暖化や、ロシアのウクライナ侵略を背景に生産資材の暴騰、機械や部品も値上がりし、注文しても手に入らず、その期間にさらに値上がりし、酪農環境はにっちもさっちもいかない事態に。

 ある農協職員は、年末に向けて、緊急対応で長期に借り入れられるセーフティーネット資金を目いっぱい借りるようにと、生産者に電話をかけています。「しかし、来年の計画はまったくたたない」と頭を抱えます。

ゴム手袋も2倍

 この未曽有の危機を何とかしなければと、釧路と根室の農協が18日、「釧路・根室の酪農を守ろう!生産者緊急大決起大会」を釧路市で開きました。

 環太平洋連携協定(TPP)以降、全国の農協が「これからは集会や大会を開かない」としてきたにもかかわらず、酪農・畜産の主産地、釧根の農協が決起大会を開催せざるを得ないほど深刻な事態となっています。

 「守れ北海道の農畜産業を」のプラカードを手に、赤い鉢巻きを締めた生産者が続々と集まりました。

 「ゴム手袋まで2倍になる、あらゆる生産資材が高騰、配合飼料を減らし、粗飼料にシフトしようとしたのに、悪天続きで牧草の収穫もままならない。生後2週間後に出荷した子牛は8千円でミルク代にもならない。ルールが合わないなら、新たなルールを作るべきだ」と生産者たち。

 根室の女性は「酪農を続けたいが、頑張る気持ちが起こらない。国はお金のかけ方を変えてほしい。このままでは乗り切れない」と切々と訴えました。

政府に対策なし

 日本共産党の紙智子参院議員は8月、「肥料、輸入粗飼料価格の高騰から生産者の経営を守るための支援に関する質問主意書」を提出しました。

 そのなかで、政府の対策について、肥料価格が2021~22年からの上昇に限定している問題を指摘。配合飼料価格高騰対策は示されているが、輸入粗飼料価格の高騰対策は示されていないとして「支援策が必要」と政府に見解を求めています。

交付金上げ・貸付金償還猶予を

「食は命の源」共産党要求

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(写真)あいさつする(奥右から)紙、畠山氏=6日、北海道厚真町

 「釧路・根室の酪農を守ろう!生産者大決起大会」に出席していた自民党の国会議員は「配合飼料基金で2期に続いて、3期は特別対策で搾乳牛1頭当たり7200円を出す予定なので活用してほしい」「農水省は消費者目線で、生産者の立場に立っていない。特別対策がこれで終わりにならないようにさせる」と言い訳に終始しました。

 最後に、根室地区酪農対策協議会の望月英彦会長が「自民党が参院選の公約を守っていたら、われわれはここに集まることはなかった。何としてもこの危機をこじ開けよう」と呼びかけました。

 酪農危機の背景には、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略、円安、気候変動と直接要因が大きく、併せて、輸入資材に依存した生産体制と、国が進めてきた規模拡大のひずみがあります。

 農民連釧根地区では「生産も消費も輸入依存から脱却し、生態系の機能を重視したアグロエコロジーの研究を含めて、肥料や配合飼料をできるだけ使わず、自給飼料を中心にした酪農、畜産に切り替えるための対応策こそが求められている」と議論しています。

 政府は、配合飼料の通常補填(ほてん)に加え、1トンあたり6750円を交付し、搾乳牛1頭あたり7200円(都府県は1万円)を来年2月に交付すると言いますが、年末に向けて悲惨な思いを抱える酪農家には光が当たりません。

 日本共産党は、交付金の引き上げとともに、当面すべての貸付金の償還を猶予し、中長期的に輸入資材に依存しない生産体制の確立に向けた対応策を求めています。

 日本共産党の紙智子参院議員は6、7両日、畠山和也元衆院議員とともに、厚真、新冠(にいかっぷ)両町を回り、肉牛飼育農家の窮状を聞きました。

 紙氏らは「食は命の源であり、農林漁業は地域社会を支える大黒柱。すぐ働き手を増やせないし、すぐ再生産できないから、なくなってから重大さに気づいたのでは遅すぎます」と指摘。生きていく足元をないがしろにする政治を変え、地域も道民も守ろうと懇談を重ねました。


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