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2022年9月16日(金)

主張

安倍氏国葬と学校

弔意押し付け 教育になじまぬ

 安倍晋三元首相の国葬への国民の批判は強まるばかりです。法的根拠もなく多額の税金を使い、国民に弔意と安倍政治の礼賛を強制する憲法違反の国葬を行うことは許されません。

 歴代首相の葬儀では学校への半旗掲揚などが求められてきました。それだけに今回、多くの人々が学校への強制に反対し、日本共産党も各地で申し入れを行いました。その結果、政府は「地方自治体や教育委員会への弔意表明の要請はしない」と述べ、学校で半旗を掲揚しない自治体も広がっています。「強制やめよ」「国葬中止を」の声を強めましょう。

賛美「刷り込み」の危険

 学校が半旗を掲げて学校全体で弔意を表することは、学校にいる子どもと教職員に弔意を求めることに他なりません。それは、個人の自由に属する弔意の強要となり、憲法19条の「思想及び良心の自由」に反します。民主主義を伝えるべき学校が、基本的人権をおろそかにしてはなりません。

 しかも、今回の国葬は安倍氏が行ってきた政治への賛美と一体です。岸田文雄首相は半世紀以上途絶えていた国葬をあえて行う理由として、「憲政史上最長の8年8カ月にわたり卓越したリーダーシップと実行力で…重責を担った」「大きな業績をさまざまな分野で残した」ことなどをあげました。

 しかし、その8年8カ月とは、安保法制などで立憲主義と平和主義を踏みにじり、貧富の差を広げて日本経済を低迷させ、「森友・加計・桜を見る会」などの国政の私物化を横行させた期間です。愛国心の強要や全国学力テストの導入など教育への政治介入も目に余るものでした。

 さらに安倍氏への銃撃事件を契機に、同氏が統一協会と自民党をつなぐカギをにぎる政治家だったことも明らかになりました。国民の間で安倍氏への評価が大きく分かれていることは明らかです。

 そんな時に学校が国葬に従うことは、子どもに安倍氏への賛美を刷り込むことにつながります。政治教育の原則を踏みにじり、“学校の政治的中立性”を自ら破りかねない行為です。

 教育基本法14条は政治教育の原則を「良識ある公民として必要な政治的教養は教育上尊重されなければならない」と定めています。旧教基法と変わらないこの規定は、戦前の学校が子どもに政府への協力的な態度を教え込んだことが戦争の推進力となったことを反省し、政治的批判力を養う政治教育を確立しようとしたものです。

 「学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」という、いわゆる“学校の政治的中立性”の規定も、闊達(かったつ)な政治教育の保障が目的です。

 学校が重視すべきは、国葬を行うことの是非を自由に話し合う環境を子どもに保障することです。

きっぱり中止を決断せよ

 岸田首相は、国葬当日に各府省が弔旗を掲揚し、一定時刻に黙とうすることを決定しました。これ自身、政府で働く人々への弔意の強制であり、そうした動きが自治体や関連施設に広がる危険も重大です。6000人もの参列者を集め国葬を行うこと自体、安倍氏への弔意を事実上強制する危険をはらみます。国葬の中止の決断こそが必要です。


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