2022年9月13日(火)
玉城デニー知事圧勝 民意三たび
新基地 もはや不可能
分断乗り越え 新時代沖縄へ
本土復帰から50年の今年、「選挙イヤー」の天王山の沖縄県知事選で、玉城デニー知事が岸田自公政権丸抱えの佐喜真淳氏に約6・5万票差をつけて圧勝しました。2014年11月の翁長県政以来、「オール沖縄」が3連勝。いずれも圧勝です(図)。「辺野古に新たな米軍基地はいらない」の民意は三たび示され、この民意を裏切って国言いなりになった候補は3連敗しました。日米両政府はこの事実を厳粛に受け止めるべきです。
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翁長氏の急逝を受けて誕生した玉城デニー県政は、県政史上まれにみる苦闘を強いられました。就任直後の18年12月、辺野古への土砂投入が開始。19年2月の県民投票で7割以上が埋め立て反対を表明したものの、安倍、菅、岸田歴代政権は民意を一顧だにせず、工事を強行してきました。
苦難を乗り越え
しかし、デニー県政は「辺野古に新たな基地はいらないという民意は1ミリもブレていない」として県民を信じて国とたたかい続け、昨年11月には軟弱地盤の改良に伴う辺野古埋め立ての設計変更申請を不承認にするなど、辺野古新基地阻止の公約を貫いてきました。各種世論調査で、新基地建設反対はつねに6割から7割。こうした民意に寄り添うことができるただ一人の候補として、高い支持を得たといえます。
また、デニー県政は19年10月の首里城火災、20年1月の豚熱、同年2月からの新型コロナウイルスの感染拡大など、災害級の事態に相次いで見舞われました。なかでも新型コロナで県の主力産業である観光が大打撃を受け、1兆円規模の収入が失われました。
こうした事態を利用し、自民党は「県政不況」「何もしない県政」と攻撃し、県政への不信感をあおってきました。
これに対してデニー県政は「誰一人取り残さない優しい沖縄」を掲げ、子どもの貧困対策基金を翁長県政の30億円から60億円に引き上げるなど、291項目中287の公約を実現。なかでも、県レベルで医療費窓口負担の中学校卒業までの無料化を実現したことは全国的にみても画期的な成果です。新型コロナ対策では、全国に先駆けて県民向けの無料PCRを広げ、受検率は全国4位となり、死亡率を低く抑えてきました。こうした実績が県知事選を通じて認識され、デニー県政への信頼が大きく高まりました。
崩れた自民戦略
自公勢力は昨年秋の総選挙で「オール沖縄」の得票を上回り、今年は1月の名護市長選をはじめ、市長選で4連勝。参院選で自民候補は初めて「辺野古容認・推進」を打ち出しました。加えて、ロシアのウクライナ侵略を口実に、憲法9条改定まで公約するなど、大攻勢に出ます。これに対して、「沖縄を二度と戦場にしてはならない」と県民が奮起。2888票の僅差で伊波洋一氏が勝利し、流れが変わりました。
佐喜真氏の選対本部長だった松本哲治・浦添市長も11日の記者会見で、参院選の結果に「落胆が大きく、再スタートに時間がかかった」と認めています。
自民党は県知事選に向けて立て直しを図り、(1)期日前投票の徹底(2)同時に行われる地方議員選との一体化による運動量の引き上げという、圧倒的な組織戦を基本戦略としました。しかし、台湾での祝福式など、少なくとも8回にわたって統一協会の会合に出席し、過去の選挙でも繰り返し支援を受けるなど、佐喜真氏と統一協会との「ズブズブの関係」が判明。「統一協会系の会合とは知らなかった」という言い訳が逆に反発を生み、8月25日の告示第一声で異例の「おわび」を余儀なくされました。知事候補としての資格そのものが問われ、有権者の批判を受けました。「政治と宗教」の関係が問われる中、公明党・創価学会の動きも鈍りました。
また、自民党は那覇で「オール沖縄」の分断工作を仕掛けてきましたが、市長選候補に「オール沖縄」城間幹子市政の元副市長を担ぎ出したことで、逆に同党内部で反発が高まり、自らの分裂を引き起こす皮肉な結果をもたらしつつあります。
![]() (写真)沖縄県名護市の辺野古・大浦湾=7日 |
岸田政権に痛打
安倍晋三元首相の「国葬」や統一協会問題で支持率が急落している岸田政権にとって、今回の県知事選の結果は痛打となりました。それでも政府は「辺野古が唯一の解決策」(12日、松野博一官房長官)だとして、辺野古新基地建設を強行する考えに固執しました。
しかし、日本がまともな民主主義国家であるなら、これだけの民意が示された下で、辺野古新基地建設の強行は不可能です。
土砂投入開始から3年8カ月で、投入された土砂は必要総量の12%弱。このペースだと、あと30年はかかります。そもそも、最深90メートルにおよぶ軟弱地盤の埋め立ては、現在の技術で不可能です。
また、デニー県政が辺野古新基地建設の不条理を米政府や議会に粘り強く伝えてきた結果、米国内でも辺野古新基地建設を疑問視する声が広がっています。20年には米下院軍事委員会・即応力小委員会が国防権限法案に、活断層や軟弱地盤をあげて「懸念」を明記。21年には、米議会調査局が「物理的に困難」とする報告書を複数回公表。米保守系シンクタンクCSISも辺野古新基地完成の「可能性は低い」とする報告書を複数回公表しました。
日米両政府はこれ以上、辺野古新基地を強行することは許されません。
沖縄県民は戦後、基地をめぐって分断させられてきました。保守・革新の対立を乗り越え、「辺野古に新たな基地はいらない、普天間基地は閉鎖・撤去を」と県民が一つになったのが「オール沖縄」です。13年1月、「辺野古新基地断念」を明記した建白書に署名しながら脱落し、県民に再び対立と分断を持ち込んでいる自公などの勢力に未来はありません。
基地をはさんだ対立はもはや過去の遺物です。復帰50年の今年、今後の50年をみすえ、今こそ、デニー氏が掲げる「新時代沖縄、さらにその先へ」はばたくときです。











