2022年9月11日(日)
主張
生徒指導提要改訂
校則に子どもの権利条約を
国の生徒指導に関する基本文書「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂されます。有識者でつくる文部科学省の協力者会議で大筋が確認され、9月以降に改訂版が公表の予定です。校則見直しなどを求める世論を受け、前向きな要素が増えました。日本共産党は文科省に校則アンケートの結果を届け、子どもの権利条約の重視を求めるなど、その動きの一翼を担いました。
子どもたちの気持ち考え
注目されるのは、提要に初めて子どもの権利条約が書き込まれたことです。新しい提要では、生徒指導の「留意点」の第一に「児童生徒の権利の理解」を置き、権利条約の重要性を強調しています。
自治活動や学校の規律、いじめ対策など幅広い生徒指導に関わる国の文書に、権利条約が明記されたことは重要です。
日本は1994年に権利条約を批准しました。それから28年、歴代政権の後ろ向きの姿勢によって、条約の内容は学校に浸透しているとは言えません。市民団体は「子どもの権利条約を生徒手帳に」と提案しています。条約の理解を広げることが改めて急がれます。
新しい提要では、校則について、▽制定の際の少数派の意見の尊重▽守らせることばかりにこだわらない▽理由を説明できない校則は本当に必要か、絶えず見直す▽校則で悪影響を受けている子どもがいないかなどの検証▽子どもや保護者の意見聴取▽見直し手続きの公開―などに言及しました。校則は各学校が決めるものですが、その参考となりえます。
現行の提要も、校則を「時代の進展などを踏まえ」「絶えず積極的に」見直すとしてきました。しかし、生徒や親が見直しを求めても、多くが変わりませんでした。
こうしたことを繰り返さないためには、子どもたちへの影響を改めて考えあうことが必要ではないでしょうか。日本共産党が実施したアンケートには、中高生の7割が校則検査があると回答し、その不快さを切々と訴えています。
服装や髪形など人間の自由に属することを細かく強要されれば、人間の尊厳が傷つきます。ジェンダーなど多様性も否定されます。大勢の前での校則違反の叱責は屈辱です。校則は不登校の原因にもなっており、暑くても上着を着用させるなど健康被害も生んでいます。こうした校則に慣らされ、不合理なものに疑問なく従う人間に育つことも心配です。
さらに、校則見直しの基準が重要です。この点では、子どもの権利条約28条2項が「学校の規律」を次のように定めていることを直視すべきです。
「締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる」。これこそ共通の不可欠な基準ではないでしょうか。
過ごしやすい学校めざし
欧米の校則は、子どもの権利を強調し、だからこそ、他の生徒や教職員の権利を踏みにじるような暴力や威嚇などを禁じています。服装を規制する場合も、ナチス・ドイツを連想させる服装の禁止など趣旨が明確です。
各地で校則の見直しの機運が高まっています。子どもの権利条約が生きる、生徒も教職員も過ごしやすい学校をめざし、力を合わせましょう。