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2022年9月8日(木)

主張

ウイグル国連報告

中国は直ちに人権侵害やめよ

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が8月31日、中国の新疆ウイグル自治区での政府当局による深刻な人権侵害を指摘する報告書を発表し、収容施設に拘束されている人の解放などを中国政府に求めました。証言や公開情報をもとに人種、宗教を理由にした虐待、抑圧を国連機関が認定したことは重大です。中国政府は報告を真剣に受け止め、直ちに人権侵害をやめなければなりません。

「人道に対する罪」にも

 OHCHRには、2017年ごろから新疆ウイグル自治区で大勢のウイグル族やイスラム教徒が収容所に拘束され、非人道的な取り扱いを受けているとの情報が寄せられていました。報告書は被害者の証言でそれを裏付けました。

 OHCHRが話を聞けたのは、ウイグル族、カザフ族など現地の状況を知る40人です。うち26人が16年以降、当局者によって強制的に連行され、8カ月から1年半にわたって区内8カ所の施設に拘束されました。銃などで武装した要員に常に監視され、拘束の理由、法的根拠や期間も明らかにされず、弁護士との接見、外部との連絡も許されなかったと言います。イスラム教の礼拝や自分の民族の言葉を話すことも禁じられました。

 電気ショック棒で殴る、手かせ足かせを付ける、椅子に縛り付ける、大声で何度も愛国歌を歌わせるといった虐待も行われ、女性に対する性的暴行もあったとの証言が得られました。

 このほかOHCHRは人工衛星の写真によって、以前存在したイスラム教の施設が跡形もなくなっていることを示しました。少数民族の言語を教える学校も閉鎖されていると言います。

 報告書はこうした行為が国際人権規約、世界人権宣言、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、民族や宗教を理由にした差別を禁じた国連総会の宣言など人権に関する国際法、国際取り決めに反していることを指摘しました。「人道に対する罪」を構成する可能性があるとも述べています。

 報告書は、収容所に恣意(しい)的に拘束されている人の解放、家族に対する所在の公表、収容所内での人権侵害行為の調査、ウイグル族を差別する法令の撤廃、国際法の順守など13項目を勧告しました。

 しかし中国政府は指摘された人権侵害行為には具体的に答えず、「反中国勢力が捏造(ねつぞう)した偽情報」「内政干渉」と報告書を出すこと自体に反対しました。国連のバチェレ人権高等弁務官が5月に現地を訪問したときは行動を制限して調査を妨げました。新疆ウイグル自治区では「反テロ法」にもとづいて「テロリズムと過激主義」とたたかっていると正当化し、収容施設は更生のための「職業教育訓練センター」だとしました。

自ら賛成した国際法守れ

 報告書は中国の「反テロ法」はあいまいで、当局に都合よく運用できるとし、国内法は国際人権法に沿ったものでなければならないと勧告しています。

 中国政府は国際人権規約の自由権規約に署名(未批准)し、同条約の社会権規約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約を批准しています。「内政干渉」との主張は通用しません。自ら署名、批准した国際的な人権取り決めを厳守するのは国連加盟国、安保理常任理事国として当然の義務です。


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