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2022年9月7日(水)

主張

国葬に16.6億円

巨費投じて違憲の儀式強行か

 松野博一官房長官が、安倍晋三元首相の国葬にかかわる警備や海外要人の接遇の経費などに14億1000万円程度かかると概要を公表しました。岸田文雄政権はすでに会場借り上げ費用などに約2億5000万円を支出すると決めており、合計約16億6000万円もの税金を国葬に投じようとしています。政府が現時点での「見込み」と説明しているように、経費はさらに膨らむ危険もあります。国葬は、安倍氏への弔意を国民に強制することにつながる憲法違反の儀式です。国民多数も反対しています。巨額の税金を投じる国葬の強行は絶対に許されません。

政府のごまかしに批判

 国葬費用をめぐっては、約2億5000万円の予備費からの支出決定(8月26日)直後から、警備費用などを含んだ総費用を明かさない岸田政権に疑念と批判の声が上がっていました。政府が費用の概要公表に転じたのは、全体像は国葬後に示すとした、ごまかしが通用しなくなったためです。

 一方で、わずか11日前に公表された費用が6・6倍にも膨張したことは、かえって疑念を深めています。2019年の現天皇の「即位の礼」では国内外から約2600人を招き、警備・接遇費で約90億円の予算が計上されました。今度の国葬には参列者を約6000人と見込んでいます。それで警備・接遇費などに約14億円しか見積もらないというのは、不自然です。費用を少なく見せようとする疑いは払しょくされません。

 国葬の企画・演出を、「桜を見る会」の会場設営に携わった企業が受注したことも不信を広げています。一般競争入札でしたが、応札したのはこの会社だけでした。同社は、少なくとも15年から19年まで、「桜を見る会」の会場設営などを落札しています。首相は「適切な手続きで行われた」と主張しますが、詳しく経過を説明する責任があります。

 そもそも国葬を強行することは憲法に反します。なぜ安倍氏だけ特別扱いして全額税金でまかなう国葬を行うのか。首相は合理的な理由を説明できません。憲法14条が規定する「法の下の平等」と相いれないことを示しています。

 憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」にも違反します。首相は、国葬は故人への弔意を「国全体であらわす儀式」と表明しました。国民主権の国でいえば、「国全体」とは「国民全体」を意味します。国民全体で弔意をあらわすということは、事実上の弔意の強制になることは明らかです。

 実際、国葬当日には各府省で弔旗の掲揚や葬儀中の一定時刻に黙とうをするとしています。こうした動きが、国の関係機関や地方自治体などに拡大される危険があります。

 戦前の「国葬令」は、日本国憲法の精神と両立しないとして戦後失効しました。法的根拠のない国葬を一内閣の閣議決定で行うことに全く道理はありません。

中止を決断する以外ない

 主要メディアの世論調査では、国葬を「評価しない」「反対」が多数を占めています。東京大学の上野千鶴子名誉教授ら17人が呼びかけた国葬中止を求めるオンライン署名などは急速に広がっています。「国民の声を聞く」というなら、首相は国葬中止を決断するしかありません。


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