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2022年9月5日(月)

きょうの潮流

 「アリスにできたなら、わたしたちにもできる!」と書いたプラカードを笑顔で掲げるのは、南アフリカの活動家、ヌールジャン・アリー。2017年、大統領の汚職に対する抗議デモの写真です▼「アリス」とは『不思議の国のアリス』(イギリス、1865年)の主人公の少女のこと。東京・森アーツセンターギャラリーで開催中の「特別展アリス」では、好奇心と行動力に富むアリスが現代の政治運動に取り組む女性たちにも影響を与えていると紹介しています▼チョッキを着た白ウサギを追いかけて深いウサギ穴に飛び込んだアリスが、しゃべる動物や動くトランプたちと出会いながら冒険するおなじみの物語は、ジェンダーの視点で読むと新たな発見に満ちています▼困難にぶつかるたびに「さあ、泣いたって何にもならないんですからね」と自分に言い聞かせ、状況に応じて体の大きさを変えるすべを学ぶアリス。水キセルを吸う青虫に「お前は誰か?」と問われて自らのアイデンティティーを模索し、樹上に現れた笑う猫から、進むべき道は「どこへ行きたいかってこと次第」と助言を得ます▼作者のルイス・キャロルは数学者で、知人の娘たちのためにこの成長譚(たん)を即興で語りました。女性らしさの特徴とされる弱さや辛抱強さ、従順さを超え、自分の力を信じて物おじせずに生きていってほしいという願いがこもっています▼170以上の言語に翻訳され、読み継がれているアリスの物語。今もどこかで少女を励ましていることでしょう。


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