2022年9月2日(金)
「野球拳で服脱がされた」
自衛隊内のセクハラ・暴行
アンケートで深刻な実態
五ノ井氏ら調査
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自衛隊内で受けた性被害を実名で告発した元陸上自衛官の五ノ井里奈さんは、自身の被害に関する調査を求める署名と並行して、自衛隊内でのハラスメント被害に関するアンケート調査に取り組んできました。8月31日に公表された最終報告から、一般社会では到底許されない深刻な実態が明らかになりました。
女性自衛官の被害で目立つのがセクハラ、マタハラです。「宴会で野球拳に参加しろと言われて、負けたら『ルールを知らんのか』と服を脱がされ、拒否したら平手でほおをたたかれた」(30代女性)、「男性隊員の前でわざと腕立て伏せをさせ、シャツの胸元をはだけさせるようしむけた。女性隊員のレントゲン写真をみんなで回して眺める」(40代女性)、「上官に妊娠を報告したら喫煙所に呼ばれて長時間『旦那を呼んで土下座して謝れ』と言われた。副流煙を吸い(胎児への影響が)不安だった」(30代女性)、「妊娠がわかると『なぜ今なのか、なぜ避妊しなかったのか』と大声で言われた」(20代女性)などの事例が複数ありました。こうした被害で退職を余儀なくされたと語る声も複数あり、中には「同期がセクハラで自殺した」(20代女性)との証言も寄せられました。
さらに、男性隊員に対してもセクハラや暴力の被害が多くありました。「班長に性器にマジックで顔を描かれて写真を撮られた」(40代男性)、「班長へ清掃終了の確認をお願いしたら『指摘事項が見つかったら服を一枚ずつ脱げ。服がなくなったら下の毛を抜かせる』と言われ実行された」(20代男性)、「演習場で足蹴りや殴る等の暴行があった」(40代男性)などです。
アンケートは五ノ井さんとChange.orgが実施。期間は7月21日~8月30日で、146人が回答しました。被害内容(複数回答)としてパワハラが101件と最多で▽セクハラ87件▽モラハラ38件▽マタハラ17件▽その他10件―でした。回答した女性82人のうちセクハラやマタハラの被害を受けたのは約87%に達しました。
隊内での相談時の不適切な対応も多く寄せられています。相談したことで解雇や降格、減給、配置転換など不利益な扱いを受けたとの回答が12人。「ハラスメントかどうか判断せずあいまいなまま」が51人、「訴えを公にしない方が良いと言われた」が33人、「ハラスメントと認定しない」が31人でした。
アンケートに寄せられたコメントでは、「自衛隊内で女性が我慢を強いられない環境を作りたい」(20代女性)、「できる限り協力したい」(30代男性)など五ノ井さんの活動に応援や共感する声も広がっています。