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2022年9月2日(金)

主張

軍事費の概算要求

平和と生活壊す大軍拡許すな

 防衛省が2023年度予算(軍事費)の概算要求を決めました。過去最大の5兆5947億円を計上したのに加え、金額を示さない「事項要求」を多数盛り込み、年末に最終決定する軍事費は6兆円台半ばに達するとも見込まれています。ロシアのウクライナ侵略に乗じ、中国への軍事的対抗姿勢をあらわに、戦後かつてない大軍拡に乗り出そうとするものです。これを許せば東アジアの軍事緊張はいっそう激化し、コロナ禍や物価高に苦しむ国民の暮らし関連予算が押しつぶされるのは明白です。

首相の対米誓約に基づく

 防衛省の要求は、中国との軍事対決を強める米国に追随した岸田文雄政権の誓約に基づきます。

 同省が8月31日に公表した概算要求の資料は▽岸田首相が5月のバイデン米大統領との会談で「防衛費の相当な増額を確保する決意を表明」したこと▽岸田政権が6月に決定した経済財政運営方針(骨太方針)が、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算の目標を国内総生産(GDP)比2%以上にしているのも踏まえ、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記したこと―を紹介しています。日本の場合、GDP比2%は約11兆円になります。

 「事項要求」は、「防衛力の5年以内の抜本的強化」のためと位置付けられています。具体的な額は、岸田政権が年末に改定する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」など安保関連3文書を踏まえ、予算編成の中で確定されることになります。

 重大なのは、安保関連3文書の改定に向けた作業の中で必要性を検討するとしている「敵基地攻撃能力」の保有が、長射程ミサイルの量産化などの形で既成事実にされていることです。

 長射程ミサイルは、▽中国本土にまで届く飛距離1000キロの「12式地対艦誘導弾能力向上型」(地上発射型)の量産▽変則軌道を描く「島しょ防衛用高速滑空弾」(早期装備型)の量産▽F35A戦闘機搭載の長射程ミサイルJSMに続き、F15戦闘機搭載の同ミサイルJASSMの取得▽音速の5倍以上で飛行する極超音速誘導弾の研究―などが計上されました。いずれも、相手国領域内をたたく「敵基地攻撃」に転用可能です。

 計画が破綻したミサイル防衛システム「イージス・アショア」に代わる「イージス・システム搭載艦」に「12式地対艦誘導弾能力向上型」の搭載も検討します。「戦闘用無人機」の研究も進めます。

 防衛省は概算要求の資料で、長射程ミサイルの能力強化などによって「わが国への侵攻そのものを抑止する」と強調しています。一方で、「万一抑止が破られた場合」として、司令部の地下化や航空基地の防護といった施策も盛り込んでいます。日本の国土が戦場になることを想定したものです。

「国が滅びる」の指摘も

 元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)の柳沢協二氏は、今回の防衛省の概算要求は「無限の軍拡ループ」を導くとし、「何としても戦争を回避する決意がなければ、軍備の重圧で国が滅びる心配がある」と述べています(「東京」1日付)。

 大軍拡を許さず、憲法9条を生かした外交で東アジアに平和をつくる政治への転換を求める国民的な運動が必要です。


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