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2022年8月31日(水)

きょうの潮流

 16代600年も続いてきた旧家でした。江戸時代までは武家でしたが、藩の没落で農家に。庭のツゲやマツは先祖代々うけつがれてきたもの。「帰れるもんなら帰りたい」。その屋敷で人生の大半をすごしてきた女性は涙をこぼしました▼原発の事故によって埼玉県に町ごと避難した福島・双葉町。ふるさとを追われた苦難の姿はドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて」にも描かれました。築いてきた生業(なりわい)、地域や人とのつながり。すべてを奪われてからの歳月の重さがひしひしと▼およそ11年半ぶりに、避難指示が解除されました。ただしJR双葉駅周辺のごく一部。いまだ町の大部分は帰宅困難区域として残ります。以前、真新しい駅舎の周りを歩いたことがありますが、荒れ果てた家や商店との対比にやるせなさが募りました▼自宅にもどったばかりの住民は「復興には、まだほど遠い」と話します。実際、帰還を希望する町民は1割ほどにとどまり、生活環境や放射能への不安から帰らないことを決断した人も▼長期化する避難生活、収束のめどさえたたない事故。原発が立地する町は、それが人間の営みと相いれないことを切々と訴えています▼いまも福島全体で3万人以上が避難するなか、岸田首相は原発7基の再稼働追加と、運転延長や新設まで検討するよう指示しました。まるで、事故などなかったかのような無責任の極み。汚染水の海洋放出にも前のめりです。人生の最後はふるさとですごしたい―その言葉をなんと聞く。


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