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2022年8月29日(月)

主張

食料・農業の危機

安心して増産に励める農政を

 農林水産省は5日、2021年度の日本の食料自給率がカロリーベースで38%になったと公表しました。小麦や大豆の生産増で過去最低の20年度よりわずかに上昇したものの、食料の6割以上を海外に依存する実態に変わりありません。世界の食料危機が現実味を帯びる中、食料自給率の向上は待ったなしです。

資材高騰が農家を直撃

 世界は今、コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵略などにより「戦後最大の食料危機」(国連の世界食糧計画)に直面しています。穀物の供給不足や価格高騰で、貧困国を中心に飢餓が懸念されます。新興国の食料需要の大幅増加により、国際穀物相場は過去最高水準で推移しているのも深刻です。

 輸入に依存する日本の食料品価格が軒並み上昇し、確保さえ困難な事態も生まれています。「金さえ出せば食料はいつでも輸入できる」という状況ではなくなっています。自民・公明政権による異常な円安も輸入食品の価格高騰に拍車をかけています。

 食料の国内生産に欠かせない飼料の75%、化学肥料のほぼ100%も海外依存です。燃油、野菜の種、鶏のひなの大半も外国頼みです。それらの国内価格も国際相場の高騰の影響で、軒並み過去最高を更新しています。

 JA全農が今秋の肥料代を今春時点より最大94%値上げすると発表し、生産者に衝撃が走りました。4月の配合飼料価格も21年比で15・8%アップし、過去最高を記録しました。肥料の一部や牧草などは供給の確保さえ危ぶまれています。国内生産の脆弱(ぜいじゃく)さはいっそう明らかです。

 資材価格の急高騰は、米価などの下落・低迷が続くもとで農業経営に大打撃になっています。農林水産省の農業物価統計調査によると、20年平均を100とした場合、22年6月の生産資材価格は115に上昇する一方、農産物価格は99に下落しています。「赤字続き。もう限界」という悲鳴が多くの農業者から上がるのは当然です。

 すでに日本の農業は歴代政府の農政のもとで成り立たなくされ、担い手や農地の減少が加速しています。いま起きている事態は、離農者の農地を預かって地域農業を支えている大規模経営や集落営農を直撃し、破綻させかねません。それは地域農業を崩壊させ、自給率の一段の低下、国民への食料供給をさらに危うくする道です。

 ところが岸田文雄内閣からは危機感が全く感じられません。食料の安全保障を口にはしますが、実際にやっているのは、米価暴落の放置や、麦、大豆、飼料作物など自給率の向上に欠かせない水田活用交付金の大幅カットなど、自給率向上に逆行する施策ばかりです。コロナ禍で「米を食べたくても買えない」人が増えるなかで、米生産者には史上最大規模の減産を押しつけているのも、その表れです。まさに「亡国の政治」です。

条件整備は政治の責任

 食料・農業の危機的現実を直視し、食の外国依存から転換し、自給率向上に責任を負う農政の実現が求められます。価格保障や所得補償などで大多数の農業経営が安心して増産に励める条件の整備が急務です。高騰する肥料・飼料代などの差額を補てんし、豪雨災害への支援など農業経営の当面の危機を打開する対策が不可欠です。


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