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2022年8月29日(月)

NPT再検討会議

核兵器廃絶が多数国の声に

保有国に具体的行動迫る

 ニューヨークの国連本部で26日に閉幕した核不拡散条約(NPT)再検討会議では、圧倒的多数の国が米英仏中ロの核保有5カ国に核廃絶へ具体的な行動を起こすよう迫りました。ロシアの反対で最終文書案を採択できなかったものの、核兵器の禁止、廃絶を求める世界のうねりを鮮明に示す会議になりました。(ニューヨーク=島田峰隆 写真も)


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(写真)5日、ニューヨークの日本総領事館前で広島と長崎の原爆犠牲者の追悼集会を開く人たち

 今回は昨年1月に核兵器禁止条約が発効してから初めてのNPT再検討会議でした。

圧力乗り越えて

 禁止条約に賛同する国々は、最終文書案で核兵器の非人道性を再確認し、“禁止条約がNPTを補完”と明記するよう求めました。

 メキシコは禁止条約の締約国・署名国(現時点でそれぞれ66カ国、86カ国)による共同声明を読み上げ、核抑止力論は誤りだと指摘し、「禁止条約がかつてなく必要とされている」と訴えました。

 会議の中盤で示された最終文書の素案は、核兵器禁止条約の発効と締約国会議の開催に言及。核兵器がもたらす壊滅的な人道的結果に「深い懸念」を表明しました。不十分ながらも、禁止条約に賛同する国々や核廃絶を求める市民社会の声を反映しました。

 核保有国は「意見の一致がない」(フランス)、「問題が多い」(英国)などと猛反発し、段落の削除や表現の大幅変更を繰り返し要求しました。

 再検討会議のスラウビネン議長は各国の意見を踏まえた改訂版をその後に複数回提示しましたが、禁止条約の発効と締約国会議開催についての言及は最後まで維持されました。非人道性の部分には「核兵器の使用や実験で影響を受けた人々や社会への支援、環境修復」という禁止条約の中身が追加されました。禁止条約に賛同する国々の声が核保有国の圧力を乗り越えた形となりました。

 国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」のベアトリス・フィン事務局長は最終日、「禁止条約への言及が最後まで維持されることは当然のこととは考えられていなかった。それが残ったということは、禁止条約がNPTに積極的な影響を与えていることを示すものだ」と述べました。

 会議で最大の焦点になったのは、核軍備縮小撤廃の交渉義務を定めたNPT第6条や過去の再検討会議で全会一致で合意した核軍縮の約束を保有国にどう実践させるかでした。

 核保有5カ国は1月、「核戦争に勝者はおらず、決してたたかってはならない」とした共同声明を出しました。しかし翌月にはロシアがウクライナを侵略し、核兵器で世界を威嚇しています。世界には約1万3000発の核兵器があり、保有国は増強を進めています。

意味あった会議

 NPT加盟国の6割以上を占める非同盟諸国を代表したアゼルバイジャンは、核兵器増強は「NPT第6条に明確に違反している」と批判。「第6条は法的な義務であり、その実践は任意のものではないし、条件を付けていいものでもない」とくぎを刺しました。

 多くの国が「核保有国の抑止力論や核増強がNPT体制を分断し、弱体化させている」(南アフリカ)と指摘し、過去の合意を時間枠や基準を設けて実践するよう求めました。

 核保有国は「国際的な安全保障の悪化」などを理由に核廃絶の要求に背を向けました。

 スラウビネン議長は閉幕にあたっての会見で、1カ月にわたって核兵器の脅威や非人道性などが大いに議論されたとし、「その点では意味のある会議だった」と語りました。

 また「大多数の国が核軍縮でいっそうの前進が必要だと主張し続けた。これは最終文書案の不採択を理由に消え去るメッセージではない」「このメッセージを核保有国が受け止め、条約上の義務を遂行することを望む」と力を込めました。

世論と市民運動

 再検討会議で核保有国に行動を迫る力になったのは、核廃絶を求める世界の世論と市民社会の運動です。

 会議期間中に市民社会が開いたサイドイベントでは、北大西洋条約機構(NATO)の核共有、核兵器の非人道性、若い世代への軍縮教育などをテーマに議論しました。国連本部内で開かれた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)主催の「原爆展」には連日、外交官を含めて多くの見学者が訪れました。

 再検討会議のNGOセッションでは、日本被団協の和田征子事務局次長が被爆体験を発言。原水爆禁止日本協議会の発言を笠井亮氏(日本共産党衆議院議員)が行い、広島と長崎での世界大会の要求を議場に伝えました。

 米シンクタンク「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長は本紙に対し「核軍縮の停滞打開の決め手は最終的には各国国民の運動だ」と指摘しました。「核の傘にある国の中で政権交代を起こして禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加させた国もある。長い道のりになるだろうが、核廃絶を進めるには世界の国民の運動で保有国に圧力をかけるしかない。いつかは変化が起きる」と語りました。


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