2022年8月28日(日)
きょうの潮流
連載の1回目でとりあげたのは、長野・松本市の食堂「ピカドン」でした。広島で被爆した前座良明さんが開き、店先に飾られていた折り鶴。それがヒントになりました▼日本原水爆被害者団体協議会が月1回発行する「被団協」新聞。そこに、40年以上500回にわたって描かれてきた4コマ漫画があります。最後の被爆漫画家といわれる西山進さんの「おり鶴さん」です▼西山さんは17歳の夏、養成工として働いていた三菱重工長崎造船所で被爆。無数の死体とうめき声の中を救助に回りました。そのときの生き地獄が、戦争と原爆の惨禍を二度とこの地球上にもたらしてはならないとの誓いにつながったと▼25歳で漫画家をめざして上京、新聞の連載を始めたのは1979年から。以来、被爆者や戦争体験者の心からのねがいを怒りや悲しみ、笑いや温かさを交え、わかりやすく伝えてきました。庶民の営みや運動、権力への風刺をおりこみながら▼今月「おり鶴さん」が単行本となって出版されました。いまは94歳で療養中の本人も「ひとりでも多くの人に原爆の恐ろしさを知ってほしい。この本を手にとってもらえたら」と喜びます▼世相を映しながら平和への強い思い、それに背を向ける政治への憤り、そして未来への希望を折り鶴に乗せてきた西山さん。そこには核廃絶を求める世界中の市民と同じ思いが流れています。悪魔の兵器にしがみつく一部の大国を包みこむ圧倒的多数の声。それこそが西山さんが描いてきた草の根の力です。








