2022年8月23日(火)
きょうの潮流
食べたいもの、着たいもの、読みたいものを与えられなかったくらし。極限まで抑圧され死と向かい合っていた日々。「戦争があったから美しいものをつくりたいと思った」▼灰色の時代に青春をすごした体験。それが、デザイナーを志した森英恵(はなえ)さんの原点でした。焼け野原と化した東京の上に広がる青い空と白い雲を見ながら、あふれてきた希望と活力。自由な心をもって生きる大切さを刻み込んだといいます▼カラフルで明るい世界へ。女性のため、人びとの日常を豊かにするために服をつくり続けました。活躍の場を海外に移しても日本の四季や文化をとり入れ、東洋と西洋の出会いをテーマに。根底にはファッションは共通言語、人間同士わかり合えるという信念がありました▼同じく世界的なデザイナーとして活躍した三宅一生(いっせい)さんの礎も戦争につながります。7歳のときに広島で被爆。割れた窓ガラスの破片が頭に突き刺さり、目の前には想像を絶する光景。母親は3年ともたず被爆の影響で亡くなり、自身も発症した骨膜炎に苦しめられました▼被爆体験を明らかにしたのは2009年、米大統領の広島訪問を促す米紙への寄稿でした。それまで原爆を生き延びたデザイナーとレッテルをはられることをきらってきましたが、「道義的な責任」に突き動かされて重い口を開きました▼平和をねがい、ファッションやデザインを通した社会変革をもとめたふたりの先駆者。相次ぐ訃報に芯のようなものを秘めた人間の生涯を思いました。








