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2022年8月20日(土)

「基地か経済か」争う時代でない

辺野古「建白書」に立ち返るとき

沖縄 玉城デニー知事に聞く

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 辺野古新基地阻止、新時代沖縄、さらにその先へ―。目前に迫った沖縄県知事選(25日告示、9月11日投票)で再選を目指す「オール沖縄」玉城デニー知事に聞きました。(沖縄知事選取材団)

新たなカラー

 ―今年は本土復帰50年を迎えて新たな「建議書」や「新・沖縄21世紀ビジョン」を策定。2期目に目指す県政、沖縄の未来像を聞かせてください。

 この4年間、私が公約に掲げてきた「新時代沖縄」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会の構築」についてさまざまな施策を講じてきました。それらの公約291項目中287項目は予算をつけて計画を進めており、実現率は98・6%と順調に進んでいます。

 また、「基地のない平和な沖縄」の実現など、50年前の「屋良建議書」にこめられた県民の願いが実現しているとは言い難いこともあり、復帰50年にあたって、新たな建議書を取りまとめました。この50年間を振り返り、未解決の課題を解決しつつ、「平和で豊かな沖縄」のあるべき姿を目指し、誰一人取り残さない優しい社会の構築、世界とつながり、時代を切り開いていく、強くしなやかな自立型経済の構築、人々を引きつけるソフトパワーを具現化する持続可能な海洋島しょ圏の形成など、沖縄の未来像を打ち出しました。

 そして、「新・沖縄21世紀ビジョン」は2012年からスタートした沖縄21世紀ビジョンの後期の計画で、20年先の沖縄を見据えた、SDGs(持続可能な開発目標)の社会・経済・環境の三つの側面も織り込みながら、あるべき沖縄の姿を示しました。まさに、新たな「デニーカラー」の政策になります。

経済波及効果

 ―県知事選では、辺野古新基地建設の問題で主要候補の立場が明確になりました。「新基地を造らせない」という公約をどう実現していくのでしょうか。

 4年前、賛否を明らかにしなかった佐喜真淳さんは新基地建設を容認し、下地幹郎さんは、現在埋め立てられている場所でオスプレイなどを運用するとしています。「辺野古新基地建設反対」を掲げる私との立場の違いがはっきりしました。

 私は、辺野古の問題については13年1月の「建白書」に立ち返るべきだと考えています。国土面積の0・6%しかない沖縄県に全国の米軍専用施設の70・3%が集中しているにもかかわらず、危険なオスプレイを配備し、辺野古新基地を押し付けるということに対して、「普天間基地の閉鎖・返還」「新基地建設の断念」を求めた建白書に、当時は宜野湾市長だった佐喜真さんをはじめ、41全市町村長や市町村議長などが署名し、政府に提出しました。そこにもう一度立ち返り、あるべき沖縄の将来像を県民のみなさんに説明すべきだと思います。

 私が普天間の一日も早い閉鎖・返還を望むのは、基地の返還に伴う経済波及効果が実証されているからです。那覇新都心、那覇市の小禄(おろく)・金城(かなぐすく)、北谷(ちゃたん)町の桑江・北前といった3地区の合計でも、基地返還前と比べて、直接の経済効果が28倍、雇用者数が72倍となっています。特に那覇新都心では、返還前の基地で働いていた人は160人余りだったのが、返還後は約1万5600人となっています。ですから、もはや「基地か経済か」を選挙で争う時代ではありません。基地問題を解決し、それを経済の発展に結びつけていくことは「車の両輪」なのです。

「誰一人取り残さない」 奔走

新基地阻止 あらゆる手段で

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(写真)新基地建設が強行されている辺野古・大浦湾。右側の大浦湾深部に軟弱地盤が広がっている=2021年12月、沖縄県名護市(許可を得て小型無人機で撮影)

 また、外交は平和的な立場から冷静に対応し、信頼関係の醸成に力点を置いて進めていくべきです。台湾有事が差し迫っているかのような論調が広がっていますが、もっと冷静に日本と中国との対話や関係を構築していくことを、日本政府に求めていきたいと思います。現に、日中は経済的に、お互いに存立し合っている関係です。冷静かつ対話を重視する外交政策で、アジア全体の安全保障にも安心をもたらしていただきたいとの要望を伝えたいと思います。

暮らしを守る

 ―この4年間、新型コロナウイルス、首里城火災焼失、軽石、豚熱といった災害級の事態が次々と沖縄県を襲いました。本当に苦難の連続でしたが、どのような思いで臨んできたのでしょうか。

 私が18年10月に就任以来、19年10月に首里城の火災・焼失、20年1月に豚熱が発生し、その対応が終わらないうちに、同年2月には新型コロナウイルス感染症が拡大を始めました。だからこそ県民の命と暮らしを守ることに全力を注ぎ、感染症対策や経済回復の対策、それから県民のいのちと暮らしを守る新型コロナ対策として、20年度から22年度当初予算の総額6765億円という予算を充てて、さまざまな対策を講じてきたところです。

 空港でのPCR検査や抗原検査キットの活用、さらに県内では誰でも平等に無料で受けられるPCR検査の体制をつくり、多くの県民から、必要なときに何度でも無料で受けることができて、非常にありがたいという声が広がっています。

 また、県民の暮らしや事業者などを守ることも、絶対に手を抜くことはできません。中でも、貧困の状況にある方々が一段と強いコロナの影響を受けています。子どもの貧困克服などの従来の取り組みに加えて、市町村との協力を得ながら、貧困の状況にある方々に対して支援体制をとっています。

 この4年間、県庁職員の懸命な努力もあり、私のライフワークである子ども、若者、女性の弱い立場の方々への医療・福祉・教育という政策がしっかりとられてきました。特に子どもの権利尊重条例を制定して、子どもを虐待から守ることと、子どもたちが公平に医療を受けられるようにするため、仲井真県政時代の3歳までから、翁長県政で小学校就学前まで引き上げた通院医療費の窓口無料化を、今年度から中学卒業まで引き上げました。

 学用品や給食費などを支援する就学援助は、これまでも増やしていますし、生活困窮世帯、非課税世帯の中高生のバス・モノレール無料化も実現しました。このような取り組みを進める子どもの貧困対策基金は30億円から60億円に積み増しました。

 今後は、対応が十分ではなかった18歳から20代半ばの支援に力を入れていきたい。例えば、多くの大学生の方々が卒業した後も多額の奨学金の返済に苦しんでいます。就職先の企業が返済の支援を行った場合、その企業への補助を、今年から始めています。

 そうしたことを振り返ると、やはり、「誰一人取り残さない優しい社会」を築いていくために東奔西走してきた4年間だったと実感しています。

建設は不可能

 ―佐喜真さんが辺野古を容認した理由・背景は、もう工事が進んでいるから認めるしかないという論だと思いますが、それについてどう思われますか。

 まず普天間の一日も早い危険性の除去のため、運用停止の実現が肝要だと思います。その運用停止とは、沖縄に戻ってこない訓練移転です。米軍の訓練は県外・国外でも十分可能だというのが専門家の意見です。また、19年の県民投票と過去2回の県知事選においても、新基地建設反対の民意が示されました。私が知事として選ばれたこと自体、民意は明らかであり、「工事が進んでいるから認めろ」という論は成り立ちません。

 そもそも、辺野古新基地は絶対に完成できない。私はそう断言できます。今、土砂が投入されている辺野古側の土砂投入量は、埋め立て土砂全体の10%余りにしかすぎません。さらに大浦湾側は、「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤の存在によって、非常に難解で複雑な地盤改良工事が予測されることなどから、関係部局が精査したところ、公有水面埋立法の要件を満たさないとして、沖縄県は昨年11月に地盤改良に伴う変更承認申請を不承認としました。

 軟弱地盤の工事は、例えば直径約2メートルの砂杭を大浦湾海域全体で7万本あまりも打ち込まないといけないという非現実的なものです。その結果、最大で14メートルも海底が盛り上がることも報告されています。また、辺野古の埋め立て工事には県の試算で2兆5500億円もの予算を必要とし、工期の延長が何年かかるかもわかりません。

 環境破壊の側面から考えると、甚大な影響をもたらすことも、多くの環境学者の方々が強く警告しています。さらに行政法学者の方々は、不承認を不服として、私人の権利救済のための行政不服審査法を、国の機関である沖縄防衛局が私人になりすまして国土交通相に審査請求することは「法の乱用」だと厳しく指摘しています。私たちも、国の関与は違法だとして訴訟を提起しています。

 ですから、あらゆる面において、この辺野古の工事は進められるべきではないのです。そのことを国民や米政府・議会にも説明し、新基地建設は不可能であるとの理解を求めていきたいと思います。辺野古新基地を止めるため、今後もあらゆる手段で、徹底的に取り組んでまいります。

玉城デニー県政の歩み

2018年

 8・8 「オール沖縄」翁長雄志知事が死去

 8・29 玉城デニー氏が出馬表明

 8・31 沖縄県が辺野古埋め立て承認を撤回

 9・30 デニー氏が県知事選過去最高得票で圧勝

 10・4 デニー知事が就任

 12・14 沖縄防衛局が辺野古への土砂投入を開始

2019年

 1・31 政府が辺野古・大浦湾の軟弱地盤の存在認める

 2・24 県民投票で辺野古新基地反対が7割超に

 10・31 首里城が火災・焼失

2020年

 2   最初の新型コロナウイルス感染を県内で確認

 4・21 沖縄防衛局が辺野古の設計変更を申請

 7   米軍基地内でコロナ感染拡大

 8・1 県独自の新型コロナ緊急事態宣言を発出

2021年

 11・25 県が辺野古の設計変更申請を不承認

 12   米軍由来の新型コロナ・オミクロン株が市中感染

2022年

 5・10 新たな建議書を政府に提出

 5・15 新・沖縄21世紀ビジョン基本計画を政府に提出

 6・11 デニー知事が2期目へ出馬表明


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