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2022年8月17日(水)

主張

ローカル線存続

国は鉄道網維持の責任果たせ

 JR東日本が、利用者の少ない地方路線ごとの収支を初公表しました。「輸送密度」(1日1キロ当たりの平均利用者数)2千人未満の35路線66区間が赤字でした(7月28日発表)。北海道、西日本、四国、九州のJR各社も既に赤字路線の採算状況などをまとめており、政府はローカル線存廃の議論を促進しようとしています。鉄道のあり方は、住民の暮らしと地域づくりに直結する大問題です。鉄道事業の公共性にふさわしく、国が公的に支えることが必要です。

「切り捨て」との批判も

 国土交通省の有識者検討会は7月25日、「輸送密度」1千人未満の路線について国と自治体、鉄道事業者が存廃を協議する仕組みの創設を提言しました。3年以内に結論を出すことを想定しています。

 提言の最大の問題は、ローカル線存続について国が責任を放棄してきたことに反省がなく、自治体と利用者に問題の解決を事実上押し付けていることです。1987年の国鉄分割民営化の際、国は、これ以上のローカル線廃止は認めないと表明しました。その約束に背いてきたことは重大です。

 対象路線を抱える自治体の首長は「地方の切り捨てに直結する」(広島県)「一律に(利用者の)人数で切る乱暴なやり方」(愛媛県)と批判しています。知事側は、事業者の事情や判断だけで廃止されないように求める提言をまとめ、政府に要請しています。

 ローカル線の利用者が減っているのは、大都市圏への人口集中政策などによる沿線人口の減少、地域の高齢化のためです。幹線道路整備に伴い日常の移動手段として自動車の普及が広がったことも大きな要因です。車に頼れない人は通勤・通学の足を奪われ、高齢者の通院に支障が出ています。この深刻な影響が人口流出を加速させ、地方の疲弊、大都市と地方の格差拡大に拍車をかけています。

 自動車依存に輪をかけるように、JR各社は減便や駅の無人化を進めたため利便性が著しく低下し、利用者離れを進める悪循環に陥っています。放置すれば地方の崩壊にもつながりかねません。

 国鉄分割民営化では、赤字路線を切り離し、比較的経営が安定していた路線をJR各社が引き継ぎました。当時、鉄道事業を利益優先・市場任せにすれば、赤字を理由にローカル線は廃止されると指摘されました。警告通りの事態です。コロナ前には大もうけしていた本州3社のローカル線までが存廃対象に挙げられる深刻さです。

 日本共産党は2017年に政策「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために」を発表しました。三大都市圏を結ぶリニア中央新幹線を核としたスーパーメガリージョン構想などを推進する一方、地方鉄道廃線を容認する政策を転換し、欧州のように国の責任で地方鉄道の維持・存続を支援するよう求めています。「公共交通基金」を創設し、全国鉄道網を維持するための安定的な財源を確保することなどを具体的に提案しています。

交通権保障し地域再生を

 鉄道は、「移動の権利・交通権」の保障とともに、地域再生への基盤としても重要です。鉄道網を維持存続し、未来に引き継ぐことを前提に議論を重ねるべきです。知恵と力を合わせ、国民的な議論と合意を広げることが大切です。


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