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2022年8月16日(火)

主張

岸田政権と8・15

過去に反省ない認識の踏襲だ

 岸田文雄首相が就任後初めて終戦記念日の全国戦没者追悼式で式辞を述べました。アジア諸国への侵略戦争と植民地支配にいっさい言及せず、過去への反省がありません。安倍晋三元首相、菅義偉前首相の式辞の踏襲です。

 侵略戦争を美化する靖国神社に岸田首相は15日に玉串料を納め、13日と15日には合わせて3人の閣僚が参拝しました。首相を含む自民党閣僚19人全員が靖国派の議員連盟に加盟しています。これではアジア諸国の信頼を得ることができません。

アジアへの加害に触れず

 岸田首相は「先の大戦では、300万余の同胞の命が失われました」と述べたものの、侵略戦争で2000万人を超すアジア諸国民の命を奪ったことに触れませんでした。

 終戦の日の式辞でアジアへの加害に言及しなかったのは2013年の安倍首相以来10回連続です。岸田首相は「歴史の教訓を深く胸に刻み」と言いましたが、何が教訓かは明らかにしませんでした。

 過去の侵略戦争から目を背けることは、その反省のうえに立った憲法9条を変え、戦争をする国をつくろうとする姿勢に直結しています。

 首相が現代を「いまだ争いが絶えることのない世界」と指摘したのは、ロシアによるウクライナ侵略や中国の覇権主義的行動を念頭に置いたものでしょう。しかし世界の平和秩序の大原則である国連憲章については一言も述べませんでした。

 憲章は、侵略行為の禁止、加盟国の主権平等、紛争の平和的解決を明記しています。日本の侵略戦争を含む第2次世界大戦への反省をもとにつくられました。世界で今も絶えない紛争を解決しようとするなら、国連憲章にもとづく外交姿勢を貫くべきです。

 首相が、日本のとるべき方向として強調したのは「積極的平和主義」でした。安倍元首相が集団的自衛権の行使容認を正当化する意味で使い始めた言葉です。

 もともとは、平和を実現するために、戦争のない状態をつくるだけでなく、根源にある構造的な暴力をなくそうとする提案です。本来の意味を正反対にねじ曲げ、軍事費2倍化の大軍拡や「敵基地攻撃能力」の保有に突き進むことを正当化するのは許されません。

 紛争の絶えない世界で日本がなすべきことは「軍事対軍事」の対決を拡大することではありません。「戦争放棄」「戦力不保持」を宣言した憲法9条を生かし、国際社会と力を合わせることが日本の進むべき道です。

侵略への反省示してこそ

 アジアでは東南アジア諸国連合(ASEAN)が、東アジアサミット(EAS)を強化し、東南アジア友好協力条約(TAC)にそくして、将来、東アジア規模の友好協力条約をめざす構想を提起しています。中国を含む包括的な平和の枠組みをつくる試みです。

 かつてこの地域を踏みにじったことに日本政府が無反省でいることは、平和なアジアを築く構想を進めるうえで大きな障害となります。

 日本がアジアの平和秩序に貢献するためには、過去の侵略に真剣な反省を示さなければなりません。これこそ戦後77年にあたって世界に発信すべきことです。


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